Cameraと散歩

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171104 スイス人の行い

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変見自在 高山正之

 スイス人の行い


ケント・ギルバートが何かの会で日本の代表的英字紙ジャパン・タイムズについて「あれはアンチジャパン・タイムズだから」と言っていた。

その通りで、この新聞は安倍晋三が嫌いで慰安婦と反原発が大好き。

それで紙面を埋めるからまともな記事は年に1本あるかないか。

今年はその1本が珍しくあった。




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先日の佐藤紘彰のコラム「誰が原爆から京都を救ったか」だ。

米側史料では45年5月初め、米政府は京都、広島、小倉、横浜を投下候補都市に選び、その時点から通常爆弾による空襲を禁じた。

原爆の破壊力を正確に測るための措置だった。

京都は最優先候補地とされた。

街が盆地状で、その中心点、梅小路操車場の上空で爆発させれば直径5キロの火球が市中心部をすべて消滅させるはずだった。

5キロ圏外の金閣寺西芳寺も盆地ゆえに直射され、60万市民とともに焼かれていたはずだ。




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アラモゴルドでの核実験の2か月も前の決定は早すぎるように見えるが、あれは未知領域の多いプルトニウム型の実験だった。

京都に落とすウラン型は「核爆発は確実」「投下都市を最初の実験場とする」方針ができていた。

実際、米エネルギー省の核実験記録にはウラン型の1回目の欄に「実験場/広島」とある。

広島は壮大な核の人体実験場だった。




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佐藤のコラムによると、その決定から1か月後、78歳の陸軍省長官ヘンリー・スチムソンが次官補のジョン・マクロイに「もし京都を投下候補地から外すと感傷的な老人と思われるかな」と言ったという。

彼はそこに新婚旅行に行っている。

マクロイは戦後、この話をアマースト大学関係者に語った。

コラムはその関係者の証言で構成されている。




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一方、米国。

日本を占領したはいいが、日本人の寛容さに比べ、彼らは黒人奴隷を使い、インディアンを皆殺しにし、今また無辜むこの20万を原爆で焼き殺した。

「残忍な白人」のイメージをぬぐうため」スチムソンの気紛れ」が利用された。

実は偉い学者ラングドン・ワーナーが日本の文化財保護を進言し「京都は守られた」とGHQの広報機関、朝日新聞に書かせた。

人間は焼き殺して文化財は保護しましたなんてペテン師だって恥ずかしくて言えない。

でも日本人はコロッと騙された。




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思慮が足りない奈良人は奈良が焼かれなかったのはワーナーさまのおかげ。

舞い上がって彼への感謝の碑を法隆寺わきに建てた。

鎌倉文化人も同じ。

米国がこのペテンに使った「ワーナーのリスト」に載ってもいないのに同じように感謝の記念碑を鎌倉駅前に設置した。

因みにコラムではワーナーは軍への進言をきっぱり否認している。

朝日新聞は嘘ばかり書く」と。

実際、彼のリストには広島城熱田神宮名古屋城も入っているが、みな燃やされた。




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空から見れば絵のように美しい名古屋城には、延べ2000機が焼夷弾を落として、とうとう焼き落とした。

スチムソンが京都を外す決断をしたころ、軽井沢疎開していたスイス公使カミユ・ゴルジェが「軽井沢を爆撃しないで」と本国に訴えている。

延べ19回も。

町の歴史愛好家が「天皇制護持を訴える暗号ではなかったか」「公使がその仲立ちをしたのでは」と研究していると新聞にあった。

本当に白人はみないい人たちばかりだから。




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ゴルジェは戦後史にも出てくる。

終戦の年の10月にマッカーサーを訪ね「日本の時計工業を潰してくれ」(共同通信)と頼んだ。

彼は頷き、幣原しではら喜重郎を呼んで労働組合法を作らせた。

労賃を上げさせて国際競争力を弱めるためだ。

ゴルジェはもう一度現れ、対日戦時賠償を算段している。

それで永世中立国は11億円の戦争賠償金を持って行った。

まるでかすり屋だ。

そんな男が日本のために一肌脱ぐか。

ところ嫌わず爆弾を落とす米軍機に辟易して、白もいるんだぞと言っているとしか見えない。




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白人を決して買い被ってはいけない。




 

’15.12.3 の週刊新潮より


171027 マグナカルタ vs 17条憲法 藤原正彦の管見妄語

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藤原正彦管見妄語

 マグナカルタ vs 17条憲法

 

集団安全保障をめぐっての長い論争が続いている。

鉄炮をもった無鉄砲な国が隣りにあり、19世紀的な領土拡張の野望をもち、しかも我が国に敵対的であったとする。

自力だけで国土や国民を守れないとなれば、必然的に「攻めてきたら皆でやっつけるぞ」の集団安全保障が必要となる。

右派の言う通り現実的には、世界一生意気だが世界一強いアメリカと組む他ないのは明らかだ。

ところが左派の言う通りこれが憲法第9条に違反しているのも明らかなのだ。

自衛隊自身がすでに違憲だ。

「戦力を保持しない」と明記していながら、自衛隊はどこからどう見ても優秀かつ強力な戦力だからである。

GHQが定めた憲法の改正をなぜかいやがる国民が、「憲法解釈」という詭弁により70年近くも合憲としてきたものだ。

ここ数年、かくも我が国が集団安全保障で揺れたのは、「話せば分かる」の通じない隣国の急激な軍事的台頭を前に、官民こぞっての嘘が、いよいよ限界に達したということだろう。

「嘘つき日本」の汚名をそそぐためには、大きく次の三つが考えられる。

なるべき早期に、
(1)嘘の根源である自衛隊を廃止する、あるいは縮小し災害救助隊にする。

(2)現憲法を改正する。
すなわち現憲法を時代に合うよう修正するか、まったく新しい独自のものを作る。

(3)現憲法を廃棄して新しいものを作らない。




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(1)は中国や北朝鮮のミサイルが日本に向けられている時代に、いくら何でも無責任すぎる。

全面的にアメリカに守ってもらうというなら完全なる属国への道を歩むことになる。

論外だ。

(2)は、戦後日本が戦争に巻きこまれなかったのは平和憲法のおかげという擁護派と、アメリカの傘の下にいたおかげという改正派ががっぷり四つに組んでいる。

平和憲法を掲げていればどこの国も攻めてこない、という神話については哲学者田中美知太郎氏が「ならば台風の襲来も憲法で禁止すればよかった」という趣旨の名言を吐いた。

それでも神話信奉者は多く、そうでない人々を軍国主義者と見なしている。

戦後70年近くこれだったからいつまで経っても埒は明くまい。

(3)は憲法なしでやっていくというものだ。

イギリスには今も成文憲法がなく、マグナカルタなど歴史的な議院決議や国際条約、重要な判例基本的人権といった普遍的価値、などに則って実務を進めている。




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近代憲法の誕生はフランスとアメリカで、前者は民衆による大革命、後者はイギリスからの分離独立、という体制の大変換により成文憲法が必要となった。

また仏米はともに論理的であるのが大好きな国だ。

アメリカは言葉も習慣も文化も違う人々のるつぼで、共通のものは論理だけだから、自然と論理一辺倒の国となった。

ヨーロッパ大陸の人々、とりわけフランス人は論理が好きだ。

一方のイギリス人は論理より地に足をつけた議論を好む。

抽象的で論理的な議論はフランス人のもの、と距離を置いている。

だから哲学においてもヨーロッパ大陸で盛んだった形而上学がイギリスでは育たなかった。

自ら経験した事実に頼るというのがベーコン以来のイギリス哲学の主流だった。

アメリカのある哲学者は,大陸の合理論とイギリスの経験論を比べ、「諸原理によって進む硬い心と、諸事実によって進む軟かい心の違い」と評した。

憲法を軸に進むフランスと、判例、慣習、良識などを参考にしながら進むイギリスとの差もここから来るのだろう。




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我が国はイギリスと同様に血で血を洗う革命を経ていないし、日本人はイギリス人以上に論理に全てを託さない国だ。

だから形而上学も育たなかった。

成文憲法なしで時代の変化に柔軟に対応しながら進むというイギリス流は日本の国柄似合っていそうだ。

古い物好きのイギリスが1215年のマグナカルタを掲げるのなら、我が国は「和をもって貴しとなす」の17条憲法(604年)を掲げればよい。


管見妄語 藤原正彦 週刊新潮 第60巻46号から



171021 奪還

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「奪還」麻生幾


「国のために死ねるか」を書いた伊藤祐靖を主人公にした小説である。

北朝鮮の特殊部隊に誘拐され船で連れ去られようとしている女性医師を、日本の特殊訓練された隊員で構成された小隊が嵐の夜、船に侵入し救い出す〜という物語なのだが・・・。

相手が銃の撃鉄を起こしたり、照準を合わせた瞬間に攻撃して倒す、という、専守防衛、正当防衛の範疇での行動なので、敵が味方に攻撃する行動に入ってから反撃するのである。

一人が狙われ、もう一人の隊員が狙っている敵を攻撃する。

結局、隊員より多い敵を倒して女性医師を救い出したのだが、小隊長以外の隊員は全員死亡した。



理由は、先に攻撃できないこと。

誰かが狙われている時、別の隊員が敵の攻撃着手を確認してから攻撃するので相手より数が多くなければ生き残れない。

少ない戦力で専守防衛の思想で守るということは、現実的ではない。

専守防衛なら、相手の2倍以上の戦力が必要だ。ということである。

それでも当方の被害は免れない。

事が起きた時、専守防衛の思想で日本を守れるか。

今の法制度で日本を守れるか。




170910国のために死ねるか