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140912 「公正さ」を欠き 批判は免れない

PB263103
14/09/12 吉田調書をめぐる本社報道 経過報告

「公正さ」を欠き 批判は免れない

共同通信論説副委員長・藤田博司氏



5月20日の吉田調書の初報を読んだとき、引用されていた吉田さんの言葉と「命令違反」「撤退」という見出しや記事のニュアンスに違和感を覚えた。
記事には、所員らが第二原発に退避したことを、吉田さんが「しょうがないな」と語った言葉もある。
読者の視線でみれば、あの見出しは行きすぎだった。


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調書では「2F(第二原発)に行った方がはるかに正しいと思った」と吉田さんは語っており、その点を記事に書き込んでいなかったことは公正さに欠けていた。
批判は免れない。


PB263105
政府は当初、公開を望まないという吉田さんの上申書を理由に公表しなかった。
だが、原発事故の再発防止の上でも、彼の発言の中に重要な教訓が含まれている。
公共の利益のために政府としていち早く出すべきだった。


PB263106
8月になって産経新聞、読売新聞、共同通信と報道が続いた。
吉田調書を入手し、朝日への批判を報じ始めたが、朝日の初報から3カ月にわたり公開に持っていけなかった点はメディアの力不足、熱意が足りなかった。


PB263107
吉田調書や慰安婦報道には、共通点がある。
それはジャーナリズムの基本原則である「公正さ」を失っていることだ。


PB263108
取材して編集する、新聞や放送で情報を送り届ける。
すべての過程において公正さが求められる。
誰に対しても説明できる取材方法か、取材者に予断や偏見・思い込みはないか、自分の信念や問題意識に沿って都合のよい話を書いていないか、そうした点をすべて排除し、注意を払って正確に事実を伝える最大限の努力をしてきたか。
それが今、問われている。


PB263109
朝日新聞が、吉田調書を特報した点は評価されていい。
それがなけれは、吉田調書やそのほかの調書の中身が闇に葬られかねなかった。
しかし、あの最初の記事は公正の原則が守られていたのか。
今回の一件は、朝日新聞がその原則を実践できていなかったがための過ちだと思う。
大事なことを付け加えておけば、これは朝日だけの問題ではない。


PB263110
読者のために公正の原則を守って取材に努め、それを証明できれば、立ち直りのきっかけは作れると考える。

PB263111

こんな原稿は社外の人間に書いてもらうのではなく、朝日の論説主幹なりが書くべきものであろう。