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141117 慰安婦問題を考える 本紙「吉田証言」でおわび 内容の信憑性薄いと判断

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’14/11/17の北海道新聞朝刊 13面

慰安婦問題を考える
日本と韓国の関係は冷え切った状態が続いている。
先に北京で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の機会にも、首脳会談が見送られ、実現のめどは立っていない。
最大の懸案になっているのが従軍慰安婦問題だ。
来年、日韓国交正常化50年を迎えるのを前に、あらためてこの問題を考えたい。



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本紙「吉田証言」でおわび
内容の信憑性薄いと判断


北海道新聞従軍慰安婦問題をめぐり、朝鮮人女性を従軍慰安婦として強制連行したという故吉田清治氏の証言に関する記事を1991年11月から93年9月までに8回掲載した。
その後は取り上げていない。


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1回目は91年11月22日朝刊で、吉田氏に直接取材した内容を「朝鮮人従軍慰安婦の強制連行『まるで奴隷狩りだった』」という見出しで報じた。
次は11月27日朝刊で、22日の記事が韓国紙東亜日報に紹介されたことを取り上げた。


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この後、韓国の元慰安婦が日本政府の補償を求めて提訴したことを伝えた記事で、弁護団が吉田氏の証言も証拠とする方針でいることに触れ(12月6日夕刊)、92年2月15日と25日の朝刊では、吉田氏を証人または参考人として国会招致しようとする動きを報じた。
このうち25日は共同通信の配信記事を使った。
8月、吉田氏がソウルを訪れた際には関連記事を2回掲載した(12日と13日の朝刊)。


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最後は93年9月14日朝刊。
慰安所担当だったという元日本軍下士官と韓国人の元慰安婦が札幌で対面したことを伝えた前日朝刊の記事に関し、吉田氏のコメントを載せた。


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北海道新聞は、過去の報道経緯を当時の記者などから聴いたり、吉田氏が著書で慰安婦狩りをしたと書いた済州島の古老や郷土史家、ソウルの研究者などを訪ねたりして、証言の内容を検証した。

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その結果、著書と記事の内容を裏付ける証言や文書は得られなかった。
吉田氏本人は死亡しているが、日本の研究者の間でも証言は学術資料たりえないとの見方が強く、信憑しんぴょう性は薄いと判断した。


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また、証言を取り上げた本紙報道(91年11月)が韓国紙に報じられた影響について、韓国の元外交官やメディア関係者、研究者らに尋ねたところ、世論に大きな影響を与えたものでないとの見方が一般的だった。
吉田氏の著書は89年以降、韓国語訳されている。


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これとは別に、北海道新聞は91年8月15日の朝刊で、元慰安婦の韓国人女性が初めて実名で名乗り出たことを報じた。
この際、「女子挺身ていしん隊の美名のもとに」などと記した。
韓国では勤労のための挺身隊と慰安婦を混同していた時期があり、取材した別の元記者によると女性もそう語っていた。


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だが、92年1月には、本来は意味の違う挺身隊と従軍慰安婦が韓国では同義語として使われてきたことを伝え、その後は混同しないようにしてきた。

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「吉田証言」記事
取り消します


吉田氏の証言に対しては90年代初めまでに疑義が出ていました。
生前の吉田氏に再取材しておけば、早い段階での事実確認が可能だったかもしれません。
報道機関には記事内容に疑問があれば自ら検証し、読者に説明する責務があります。
北海道新聞がそれを怠り、裏付けの乏しい記事をそのままにしてきたことを、読者の皆さまにおわびし、「吉田証言」記事を取り消します。


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また、北海道新聞のこれまでの記事を蓄積しているデータベースの当該記事には、吉田氏証言の信憑性が薄いと判断し、取り消した旨を付記します。

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来年は戦後70年、日韓国交正常化50年の節目を迎えます。
北海道新聞は今回の反省を踏まえ、戦争をめぐる問題と真摯しんしに向き合ってまいります。


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