Cameraと散歩

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160726 外電は神様?

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変見自在 高山正之

外電は神様?


深夜、ドアのノックで起こされた。
船員が救命具を投げ、避難を促した。
甲板に出ると別の船員が最下等船室の支那人は上がってくるなと言った。
二等船室の日本人だと告げ、何が起きたのか聞いたが返事はなかった。
しかし救命ボートに乗客が群がる状況は何が起きたかを雄弁に語っていた。
1912年4月、タイタニック号の沈没に乗り合わせた鉄道院副参事細野正文のメモにあるその瞬間だ。
救命ボートには女子供が優先だと船員が銃を振り回しながら言う。
日本人の恥にならぬよう覚悟を決めた時、降下を始めた10号ボートから「あと2人」の声があった。
周囲に女性はいなかった。
英人が即座に飛び乗った。
誰も続かないのを確認して細野も飛んだ。


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タイタニックに乗り合わせたたった1人の日本人は生還を果たした。
か、もっと不幸が待っていた。
生還したケンブリッジ出の科学教師ローレンス・ビーズリーは「無理やり乗り込んできた嫌な日本人がいた」と語った。
それが外電で伝えられると日本の新聞は細野を罵り、非難の手紙が殺到した。
彼は弁解せず、職を辞してひっそりその後を過ごした。
一方、ビーズリーは事故の2か月後には遭難記を出版し、それはハリウッドで2回も映画化された。
その文中でビーズリーは「右舷13号艇に乗った」とあった。
細野は左舷10号艇に乗っている。
卑劣な英国人が見た「嫌な日本人」は出稼ぎの支那人だと分かり、97年の「タイム」誌か85年ぶりに細野の身の潔白を証明した。


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その間、日本の新聞は何をしていたのか。
同じ日本人の細野を信じようともせず、いい加減な英人の戯言ざれごとを鵜呑みにしてきた。
しかもその無実を明らかにしたのも外国誌とはいったいどういうことなのか。
産経新聞曽野綾子のコラム「透明な歳月の光」で彼女が南アの白人マンションに入居した黒人一家の話を紹介した。
黒人の家庭は大家族主義だから一家4人用のスペースに30人が住みつく。
それが風呂や洗濯をするといっぺんに水不足になり、白人が逃げ出し、いつの間にか黒人マンションになった。
「人間は事業も研究も運動も何もかも一緒にやれる。しかし居住だけは別にした方がいい」と結ぶ。
これを読んだとき大方は川口市の芝園団地を、あるいは堺市南区の団地を思い出したのではないか。


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住みついた支那人が窓から使用済みのオムツを捨てる、火のついた煙草を捨てボヤ騒ぎは起きる。
通路に粗大ゴミを捨て、エレベーターに大便をする。
確かに曽野さんの言う通り、一緒に住めない人種もいるものだなあと思う。
ところが2、3日してロイターが「首相の元アドバイザーがアパルトヘイトを称賛した」と打った。
ロイターと言えば駐日特派員アンドレ・プーレーがシーメンス事件のネタで強請ゆすりにをやった。
それで事件が発覚し、夫人が恥じて首を掻き切る騒ぎもあった。
今も反日で鳴らす通信社なのに朝日新聞がそれに飛びついた。
論調も同じで安倍首相の元側近が人種差別を勧めたと。


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札付きの外電が日本の悪評を流せば、まず日本人のために動くのが日本のメディアの役割なのに。
朝日は2日後にまた同じネタを取り上げ「安倍首相のアドバイザーだったことはない」と否定する曽野談話を付けながら、「首相の元アドバイザーがアパルトヘイトを」と再掲する。
安倍首相はこんな危ない思想の持ち主を側に置いていた。
それを外電が世界に流した。
さあ大変。
「国際社会で理解されぬ」と大久保の韓国人の言葉が続く。
曽野さんの反論には首相がはかった教育問題の会の一員だったから十分としているようだが、「アドバイザー」は例えば大統領の「特別顧問」とか普段は訳している。
揚げ足取りの領域を超えている。
なによりなぜ日本で起きたことまで外電の判断を優先するのか。
細野正文の悲劇をまた繰り返す気か。


’15.3.5 週刊新潮より