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Cameraと散歩

since '140125

160924 多妻制も脳進化の原因?

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多妻制も脳進化の原因?

この世には「それを言ったらおしまいだ」という思いのために、皆わかっているけれど、あえて口にしないようにしている事柄・事実が結構ある。
だが、脳や心の進化を問題にする際には避けて通れない。

人を含めた霊長類の脳進化に「多妻制」が密接に関係しているという話である。


霊長類は食性によって大きく二つのグループ(葉食性と果実食性)に分けられるが、忘れてはならないのは社会構造である。
様々な社会構造があるものの、これも大きく二つに分けることができる。
多妻型と一妻型である。


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多妻型の社会は、比較的少数のオトナオスと比較的多数のオトナメスから形成されている。
つまり、比較的少数のオスが比較的多数のメスと性行動を営む社会で、典型例はハーレム型社会である(1頭のオスが多数のメスと交尾する)。
したがって、オス1頭あたりのメスの数は1より多くて、少なくとも1.2、多いと5かそれ以上といった数になる。


一方の一妻型の社会では、オトナメスは1頭で、オトナオスは1頭かそれ以上いる。
典型例はペア型(オスとメスが1頭ずつ)だが、一妻多夫型の社会を持つサル類も中南米に存在する。


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では、相対脳重はどちらの社会でより大きいのだろうか?
近代社会の人類の多くは一妻型なのだから、当然一妻型の方が大きいと思われるかもしれない。
だが、事実は違っていた。
多妻型社会を持つ霊長類の方が、一妻型の霊長類よりも大きな相対脳重を持っていることが判明したのである。


果実食性の類人猿の中ではテナガザルが一妻型で(一夫一婦)で、チンパンジーやゴリラが多妻型だ。
この2種類のサルを比べてみると、テナガザルの大脳の大きさはチンパンジーの半分しかない。
そして、一見して皺の数や複雑さの程度がチンパンジーよりも少ないことがわかる。
こうした事実から、多妻型社会の霊長類の方が、一妻型の霊長類よりもよく発達した脳・知能を持つことはほぼ疑いない。


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ヒトは一妻型なのだから、このデータはヒトには通用しないのではないかと思われるかもしれない。
しかし、ヒトは実は、基本的には多妻型なのである。
ヒトを含め、多妻型の霊長類の方が一妻型のものに比べて脳も知能もより発達していることは確かなのだ。
では、その要因とはより具体的にはなんだろうか?


多妻型社会と一妻型社会では、社会関係は顕著に違う。
多妻型社会では多数の個体が社会交渉を繰り広げており、一妻型の社会よりも複雑な社会関係を持つ。
多妻型のサルは、順位制や協調行動、互恵的利他主義(他個体を助けることによって、自分も利益を得る行動戦略)、あるいは、追放主義(ある個体をみんなで群れから追い出す行動戦略)などの様々な社会関係を発達させている。


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こうしたことから、多妻型社会に結びついた社会関係ーー順位制や協調行動、互恵的利他主義、追放主義などーーが少なくとも社会的知性に関係する脳領域の進化要因になってきたことはほぼ明らかである。
私たちの脳進化に、多妻制に結びついた社会関係が大きな要因として働いてきた。

澤口俊之著 「わがままな脳」より