Cameraと散歩

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170119 上海バンスキング

DSCT0206 (1 / 1)

上海バンスキング

オンシアター自由劇場公演の「上海バンスキング」は、吉田日出子というその主演女優をユニークなジャズシンガーとして、一躍クローズアップした。
このレコードは、吉田日出子と劇団バンドが初めて出したレコードである。
昭和56年10月1日に買っている。
36年も前のことだ。

スイングジャーナル誌の絶賛の紹介記事を見て買ったと思う。
ーが、バンド演奏がサーカスのジンタのようなもので、買った当時は大して良いとは思わなかったようだ。

いま、改めて聞くと妙に懐かしい思いが胸の中から湧き出てくる。
日清戦争後などの昭和初期の出来事を否応なく知らされる近年の情勢のためか、当時の日本の生き方や人々の気持ちがしのばれて感傷的になってしまう。

フラットがかったクラリネットの演奏が非常に効果的に聴き手に効かせて("聞かせて"ではない)くれる。
トランペットが、これだジャズだよねと納得させる上手さなのに対し、クラリネットが本当に素人っぽく下手に聞こえるのだが、実は効果を出すために工夫したらしい。

吉田日出子の歌も、当時はさもあらんという雰囲気を出していて実際の舞台を見て見たかった。


スウィンギン・ジャズ・ミュージカル・ショーと銘打って、『生バンドでつづる、黎明期のジャズマン達の恋と夢、あの街には、人を不幸にする夢が多すぎた・・・・』というキャッチ・フレーズの通り、吉田日出子のうたう昭和初期のジャズソングと劇団員のジャズ・バンドの演奏とが、上海のクラブ「セントルイス」の舞台にして展開される。

昭和11年(1936年)2・26事件の直後にクラリネット吹きの波多野が、ダンスホール花月園主の娘マドンナを連れて上海に渡り、トランペット吹きのバクマツらと共に、ジャズに打ち込もうとするミュージシャンの哀歓、マドンナや中国娘リリーとの間の恋や別れ、中国や太平洋の戦争激化に伴う時代の重圧に押し流されるこれら反逆児達の人生を彩る華麗なメロドラマは、不可思議なリアリティを以って、我々見る者の心をゆさぶる。

マドンナ正岡まどかに扮する吉田日出子の唄と、波多野(藤川延也)のクラリネット、バクマツ松本 亘(笹野高史)のトランペットを中心とする劇団員ジャズバンドの演奏とが、何ものにも増して、我々を遠い昭和10年代の日本と上海のエンターテイメントの世界の中に、引きずり込んで、その魅力のとりこにしてしまう。 ー 瀬川昌久氏の解説の一部