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Cameraと散歩

since '140125

170126 35%の学者

変見自在

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変見自在 高山正之

35%の学者


朝日新聞子飼いの憲法学者長谷部恭男が国会で安保法制を「違憲」と言った。
対して「いや合憲だ」と自民党議員が言い返した。

朝日の論説主幹、大野某がそれに絡んで「興味深いデータ」を先日の1面コラムで紹介していた。
それによると「国会議員の信頼度は25%。学者のそれは65%」だという。
民意は我が子飼いの憲法学者の言い分にあると言いたいらしい。


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議員の信頼度では米国にも似たような言い方があって確か「議員は中古車のセールスマン並み」と言う。

まったく信用ならないという意味だ。
どの国も議員の信頼度は低いのが相場らしいが、問題は学者の方だ。


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米国を例にとると、HIV発見を巡って20年、仏モンタニエ博士と米医学者ギャロが争ったが、実はギャロがモンタニエから株分けしてもらったウイルスで「オレが発見」と主張していた。

高峰譲吉がアドレナリンを発見すると、米国のジョン・エーベルが「オレが先に抽出に成功した。高峰が盗んだ」と言い出した。
後にエーベルの言う方法では抽出できないことが分かった。

南極観測隊の中鉢繁が1982年、オゾンホールを見つけ、ギリシャで開かれたシンポで発表した。
その後米国人学者F・ローランドがオゾンホールを見つけたと言ってノーベル賞を取った。


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米国では歯医者はサディストの、学者は詐欺師の代名詞に使われる。
対して日本ではiPSの山中伸弥島津製作所田中耕一など学者の信頼度は常に100%近い。
ただ朝日が絡む学者だと途端にそれが下がる。

一橋大教授の藤原彰は中支戦線で焚かれた煙幕を毒ガスだと言った。
嘘がばれて朝日は訂正した。

早大の後藤乾一は「スマトラで要塞を掘らせた地元民3000人を穴埋めにした」と言った。
実際は3人の村人が物置用の穴を掘っただけで、3人とも健在が確認された。

慰安婦問題では中大の吉見義明が漢字読み替えという子供騙しの手法で「軍の関与」を発見した。
山中教授らだけなら100%近い学者の信頼度。
それが65%にまで落ちたのは、朝日に媚びて怪しげな話を振り回す学者たちの不行跡のゆえとも思える。


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大野の一文が出た同じ日の紙面に作家の高橋源一郎違憲問題を書いていた。
改めて砂川裁判を勉強したとかで、集団的自衛権を合憲とした「最高裁長官の田中耕太郎が駐日米公使と入念な打ち合わせをしていたこと」に驚いていた。
彼は知らない風だが、日本の憲法GHQが1週間で作り、日本側がそれをそのまま翻訳したものだ。
だからヘンな日本語のままだし、私学にはカネを出すな、信教の自由はあるが神道はダメだ、とか解釈の難しい条項が多い。
最高裁長官とて分からないときは憲法を書いた米国に聞くこともある。
別に驚くに当たらない。

それより「あらゆる本を読んだ」作家だったら憲法9条を見た瞬間、リビウスの『ローマ建国史』を思い出したのではなかろうか。

ローマは負けたカルタゴに軍隊も軍象も軍艦もすべて廃棄させたうえ、交戦権まで奪ってしまった。
丸腰のカルタゴはそれから50年後、隣国ヌミディアの侵略にたまらず自衛戦争に立ち上がった。
ローマはそれを交戦権放棄の違反として第3次ポエニ戦役を起こしてカルタゴを滅ぼした。

オーウェンラティモアは「日本の戦後処理はカルタゴ方式で」と言い、間もなく軍隊の不保持と交戦権の放棄を謳ったGHQ憲法が登場している。


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日本には本来、自衛権などない。
しかし日本にとってローマに当たる米国が日本に自衛権を認め、自衛隊もOKした。
カルタゴとちょっと事情が違ってきた。

その辺を作家として書けば面白かったのに、今回は朝日の主張にべったりだ。

彼のもう一つの肩書きは明学大教授。
今回は朝日に載る学者らしい書き方をしたということか。

’15,07,30の週刊新潮より