Cameraと散歩

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180410 ISのお返し

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変見自在 高山正之

 ISのお返し


パリのテロのあと、米市民から粋なエールがあったと朝日新聞論説主幹大野博人が嬉しそうに日曜コラムに書いていた。

エールに曰く。
「フランスはイスラム狂信者が憎むものをすべてをもつ。ワインを飲み、短いスカートをはいて不倫を楽しみ、聖職者すらもからかう」

イスラムではすべて禁忌の作法だ。

あんなテロがあったって「あなたたちは闇の力に負けず、再び笑い、歌い、セックスして・・・・」「人生を楽しむことがあなたたちの本質だから」と。




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ルモンド紙も満足そうに紹介したという。

でもフランス人が人生を楽しむために過去、彼らに何をしてきたかはこの米市民は触れていない。

大野も書いていない。

例えば侵攻するドイツ軍に備えて危ないアルデンヌの森の前にはアルジェリアセネガルの植民地兵2万人を並ばせた。

機甲師団が一人残らず殲滅した。

フランス人はそれを見て白旗を上げた。

マレーでインド兵が壊滅するのを見てパーシバルが降伏したのと同じタイミングだ。

以後、フランス人は周りが戦争している中、ワインを飲んでセックスして楽しんでいた。

マルセル・カルネが独占領地のあちこちをロケして「天井桟敷の人々」やらを製作したのもこのころのことだ。




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ヒトラーユダヤ人の処理を始めると、フランス人は喜んで協力した。

今回のテロの根拠地サンドニ近くに収容所を建ててユダヤ人を押し込んだ。

そこからアウシュビッツ直通列車を走らせ、計7万8千人を殺した。

フランス人はホロコーストの確信的共犯者だった。

やがて連合国軍が反撃に出る。

英国に逃げたド・ゴール自由フランス軍を創り、再びアルジェリア人ら植民地人をかき集めてノルマンディに上陸させた。

再び万単位の植民地兵のしかばねの山が築かれ、フランスは解放された。

しかし、犠牲は報われなかった。




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大戦中、連合国軍管理下にあったアルジェリアベトナムもみな「フランスの栄光の復活のため」(ド・ゴール)に元の仏植民地に戻された。

日本に刺激されたベトナム人がまず反旗を翻し、アルジェリアチュニジアもそれに倣った。

フランスは主人のために働くのを拒んだ植民地人に残忍に報復した。

ギロチンが植民地の町ごとに持ちこまれた。

かつてフランス人アレクシ・トクビルが米国の大らかな民主主義を褒め称えるエールを送った。

「米国人とその下で働く黒人とインディアンは人間と動物の関係に似る。主人のために働き、従わねば殺していい」

植民地人は動物並みにクビを落とされた。




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中東でも同じだ。

今のシリアとイラクの上半分を仏領にし、石油を取ってはフランスの栄光のために使った。

民のためには学校一つ建てなかった。

先日のAPがイスラム国(IS)で行われたホモの突き落とし刑を伝えた。

目隠しされた同性愛者が4階建てのビルから落とされ「瀕死の男に住民が石をぶつけて止めを刺した」。

大野はその残忍さを「不条理」と言うが、元々イスラム教徒はそこまでの残虐さを持たなかった。

最初に仏十字軍が来て女子供を殺して食う残虐さを教えた。

第4次十字軍がやった突き落とし刑は目隠しではなく目をえぐってガラタの塔から突き落としている。

何もかもキリスト教徒がやって来たことだ。




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対してアラブ世界では例えばサダム・フセインが立って民に教育を与え、女を宗教のくびきから解放して近代化を図った。

ユネスコからそれで表彰もされた。

カダフィもベン・アリも同じ。

それはお前らには似合わないと白人国家がアラブ近代化をことごとく潰して今の混乱を生んだ。

ISは追い詰められた彼らの開き直りではないのか。

日本はイスラムにも十字軍にも贔屓ひいきはない。

なのになぜ大野は白人キリスト教徒の視点でしかモノを書かないのか。

’15.12.17 の週刊新潮より