Cameraと散歩

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170715 日曜は寝ていろ

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変見自在 高山正之

  日曜は寝ていろ


「朝日を読んでいる」と言うと大方は顔を顰めるか、どう答えていいものか戸惑いを見せる。
大丈夫、仕事でやむを得ず読んでいるだけと釈明すると、なんだ、まともな人なんだと安堵してくれる。
実際、あの新聞は体に良くない。
どこか詐欺師っぽくてサブリミナル的に人の記憶まで歪ませる。



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例えば少し前の「フォトアーカイブ」に半世紀前のスモッグに煙る都心の写真が載った。
今の北京ほどひどくはないけれど、確かにそんな時代はあった。
その下にすっきり空の同じ銀座の写真があって、絵解きに美濃部亮吉が「東京に青空を」といって都知事選を制したとある。
青空を取り戻したのがまるで美濃部のおかげだったみたいに読める。
彼は「1人でも反対したら橋は架けない」とか馬鹿言って都市計画を止めた。
女秘書とねんごろになったりして結局、環七も環八も渋滞させ、スモックをより濃くしただけだった。



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東京に青空を取り戻したのは石原慎太郎の排ガス規制だ。

それで東京から富士山が見えるようになった。
他人様の業績を無能知事の手柄にげ替える。
実にたちが悪い記事だ。
そういう小狡さに加えてこの新聞の記事は何か座りの悪さがある。
それが何か、先日のお偉い編集委員、山中季広のコラム「日曜に想う」を読んでやっと分かった。



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日本が打ち出したMRJの前に支那印のジェット旅客機が出てきた。
コラムは「インドネシアで新幹線受注を支那に攫われた、空でもまた負けるのでは」と心配する。
しかし専門家から「いや日本はカナダと競っている」と聞かされ「妙に安心」する。
だって「欧米の背中を追うのが私たち日本人には居心地がいい」とのたまう。 文章が判り難いのは措いて、そこに徹底した白人崇拝が滲む。
朝日のもう一つの隠れた毒性だ。



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例えば夫婦同姓を合憲とした最高裁に「海外では夫婦同姓を法律で義務付ける国はない」と社説で非難する。
白人国家を見倣えと。
朝日は護憲を語る。
根拠は白人マッカーサーが創ったから。
中身も「かしこくも米国憲法の理念と同じ」(長谷部恭男・早大教授)だから。
高速増殖炉もんじゅ」問題もスタンスは同じ。
成功すれば「人類2500年分のエネルギーが確保」(奈良林直・北大教授)される。
世界が処理に困っている「核のゴミ」もこの炉で焼却処理できる。
しかし朝日は「ドイツもフランスも開発を諦めた」から「日本もやめろ」という。
白人ができなかったものをなぜ日本人ごときがやり続けるのかと。



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これが違和感の元だろう。
日本人はそんな白人崇拝を欠片かけらも持たない。
早い話、クオーツだ。
通電した水晶の正確な振動は時計にもってこいだ。
欧米が競ったが簞笥より小さくならなかった。
精工舎は諦めず、腕時計に入るほど小さくするのに成功した。
精工舎は特許を世界に開放し、白人は箪笥を背負って歩かずに済んだ。



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ディーゼルエンジンは簞笥より大きくて船に載せるだけだった。
ドイツ以下が小型化を競った。
みんな諦めたとき山岡孫吉昭和8年12月23日、耕運機に載せられるほど小型化するのに成功した。
奇しくも今生天皇のお生まれになった日だった。
この技術も日本から世界に発信された。
ドイツはそれを車に積んだ。
ついでに独自の技術で排ガスを誤魔化すソフトを併せ搭載した。
白人ができるのはその程度のことだ。



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実は増殖炉研究もそれと同じ。
日本が原子力規制委に邪魔されながら積み上げたノウハウをもとに今フランスが研究を再開(「週刊新潮」1月28日号)した。
米英もそれに倣って「もんじゅ」再開を待っている。
日本人は「白人の背を追う立場」にはいない。
むしろ民主主義から礼儀まで彼らに多くを教える立場にある。

「日曜に想う」と恥じをかく。

日曜はゆっくり寝ていた方がいい。

’16.2.11 の週刊新潮より