’19/01/09付け北海道新聞朝刊4面の記事
日韓泥沼化 主張譲らず
元徴用工訴訟 協議不調ならICJに提訴も
レーダー照射 動画公開 国際世論へ宣伝合戦
日韓関係が泥沼化の様相を見せている。
元帳用工訴訟を巡り、日本側が日韓請求権協定に基づく対抗措置の準備を急ぐのに対し、韓国地裁支部は新日鉄住金の韓国内の資産差し押さえを認めることを決定。
レーダー照射問題では互いに自国の正当性を訴える動画を公開し、国際世論への宣伝合戦を繰り広げている。
日本政府・与党内では韓国製品の関税引き上げなどの強硬論も取り沙汰される。
「日本企業に不利益が生じるようなことになれば、直ちに取るべき手段を取らなければならない」。
河野太郎外相は7日夜、元徴用工訴訟に関し訪問先のインドで記者団に強調した。
韓国地裁支部による決定が明らかになったのは、その後間もなくだ。
日本政府は今後、差し押さえの動きが出れば、1965年の協定締結以来初の協議開催を求める方向で調整中。 不調に終われば、第三国委員を含む仲裁委員会に委ねたり国際司法裁判所(ICJ)に提訴したりする可能性もあり、問題の長期化は必至だ。
2016年末に韓国・釜山の日本総領事館前に従軍慰安婦被害を象徴する少女像が設置された際、日本側は駐韓大使を一時帰国させ、日韓関係は緊迫した。 この時以来の深刻な局面をいかに打開するか。
日本外務省は「韓国側が対応策を講じれば、まだ関係悪化は食い止められる」(幹部)とするものの、政府・与党内には韓国製品への関税引き上げや渡航自粛などの報復措置を求める声もある。
レーダー照射問題も、両国が主張を譲らず手詰まり感が強まっている。
韓国側はレーダー照射を否定し、逆に日本の哨戒機が低空飛行で威嚇したとして謝罪を求める動画を中国語やロシア語など8カ国語で公開した。
日本側の動画は3カ国語にとどまっており、佐藤正久外務副大臣は「(国連公用語の)フランス語やスペイン語でも発信すべきだ」と訴える。
問題がこじれれば、対北朝鮮を巡る連携にも深刻な打撃となりかねない。
岩屋毅防衛相は8日、機密を保持しながら、海自が保有するレーダー波の傍受記録を実務者協議で示し、韓国側の記録と交換する用意があるとの意向を示した。
これ以上の非難の応酬をやめ、事態を打開する狙いがある。
ただ、文在寅政権は支持率低下に苦しんでおり、世論を無視して日本の意向に速やかに応じるかは見通せない。
(十亀敬介)