’19/01/17付北海道新聞朝刊2面の記事
日本 データ相互開示を / 韓国 非常に無礼な要求
レーダー照射 着地点見えず 防衛協力に悪影響も
韓国海軍駆逐艦が海上自衛隊の哨戒機に火器管制レーダーを照射したとされる問題で、日韓両国が互いに主張を譲らず、着地点を見いだせない状況が続いている。
韓国側がシンガポールで開かれた日韓防衛当局間の実務者協議での日本の対応を「無礼だ」と批判したのに対し、防衛省は16日、韓国側の公表内容に抗議した。
非難の応酬で両国の溝は深まっており、今後の日韓の防衛協力に悪影響を与える懸念もある。
自民党本部で16日に開かれた党国防部会・安全保障調査会合同会議。
「『遺憾』のレベルは既に過ぎた」
「譲歩することなく信念を持って協議を続けるべきだ」。
出席者からは韓国側の対応を非難する声が噴出し、韓国に対して制裁を課すべきだとの強硬論も上がった。
日本側は14日の実務者協議で、レーダー照射に関するデータを両国が相互に開示して突き合わせ、レーダ照射の有無を明らかにすることを提案した。
しかし、韓国国防省の報道官は15日の記者会見で、日本側はレーダーについて収集した一部の情報を開示するのと引き換えに、韓国側に全ての情報を開示するよう求めていると説明。
「非常に無礼な要求で、問題解決の意志がない無理な主張」と日本側を非難した。
防衛省関係者は「『事実の証明に必要なデータをお互いに出そう』と求めただけで批判はおかしい。韓国はデータを開示すれば不利になると分かっているのだろう」と指摘する。
防衛省は16日、在日韓国大使館の武官を同省に呼び、韓国側が事前の申し合わせに反して実務者協議の内容を公表したことに抗議。
韓国軍の駆逐艦が海自機の呼びかけに応じなかったことについて、韓国側が「交信し難い状況であったことを日本側も一部理解した」と公表したことなどに対しても撤回を要求した。
日韓の防衛当局を巡っては、韓国政府が昨年9月、自衛艦に国際観艦式で旭日旗を掲揚しないよう要請していたことが判明し、日本側が艦艇派遣を見送った経緯がある。
15日に発表された2018年版の韓国の国防白書では、日本との安全保障協力を巡って従来の「韓日両国は自由民主主義と市場経済の基本価値を共有している」との表記が削除されるなど、日韓の対立は日に日に先鋭化している。
日米韓3カ国は弾道ミサイル対処のための合同演習なども実施しているが、政府関係者は「問題が収束しなければ、北朝鮮問題などを見据えた防衛協力にも影響が出かねない」と危惧する。(佐藤木郎、ソウル 幸坂浩)
《レーダー照射問題についての日韓の主な主張》
レーダー照射の有無
・日本 韓国軍駆逐艦が海自哨戒機に向け、火器管制レーダー特有の電波を一定時間継続して複数回照射したことを確認した
・韓国 韓国軍駆逐艦は遭難船舶救助のため、探索レーダーのみ運用し、火器管制レーダーは使用していない
海自機の飛行
・日本 海自哨戒機は国際法遵守し、韓国軍駆逐艦から十分な高度と距離をとって飛行した
・韓国 海自哨戒機が韓国軍駆逐艦の上空を威嚇的に低空で飛行した。
国際法は民間機が対象で、軍用機には適用されない
無線での呼びかけ
・日本 海自哨戒機は三つの周波数を用いて韓国軍駆逐艦に呼びかけ、レーダー照射の意図の確認を試みたが応答はなかった
・韓国 海自哨戒機の呼びかけは通信感度が低く、韓国軍駆逐艦は明確に聞き取れなかった
データの開示
・日本 日韓双方が情報を開示し、突き合わせるべきだ
・韓国 日本側は情報の一部のみ開示する意向なのに対し、韓国側には全般的な情報開示を求めており、無礼だ
190117 レーダー照射 着地点見えず