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201220 函館イカ不漁  中国船の影  違法操業 推計で日本の10倍漁獲

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'20/12/20付北海道新聞朝刊1面の記事

函館イカ不漁
 中国船の影
違法操業 推計で日本の10倍漁獲


【函館】中国漁船の日本海での違法操業によるスルメイカの乱獲が、イカの街・函館に影を落としている。
国立研究開発法人水産研究・教育機構(横浜)は、中国漁船が毎年15万トン漁獲していると推計。
日本漁船による昨年度の漁獲量の10倍以上に当たる。
函館港での水揚げは近年急減し、終盤を迎えた今季も過去最低水準の不漁で、専門家は「津軽海峡へ北上するイカが先取りされている」と指摘する。




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大和堆に侵入
「日本漁船が操業している海域の西側で中国漁船が乱獲し、日本側に来るのを止めてしまっている」。
11月下旬、中型船で約40トンを水揚げした函館市内の男性船長(68)は嘆いた。
好漁場の大和堆周辺で漁を行っているが、漁獲量は5年前の半分に満たない。
水場げはもともと月1回ほどだったが、この日は2カ月ぶりで「(漁模様は」苦しいなんてものじゃない」。

日本の排他的経済水域(EEZ)内にある大和堆では、中国漁船の違法操業が急増しており、水産庁の漁業取締船が退去警告した隻数は今年1〜11月で4177隻と、昨年1年間の3.7倍に達した。
500〜千トン級の大型漁船もあり、引き網などで大量に漁獲しているとされる。




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こうした中、水産研究・教育機構は10月、日本海スルメイカの資源評価を公表。
中国漁船の動向を考慮しなければ正確な資源量の分析につながらないと判断し、日本と韓国の漁獲量だけでなく、公表されていない中国の漁獲量についても初めて推計した。

韓国の論文や人工衛星を活用した漁業活動調査などを基に推計した中国漁船の漁獲量は、日本海で漁を本格化させた2005年度以降で年平均15万トン。
日本漁船による昨年度の漁獲量は約1万4千トンで、中国漁船の10分の1以下だった。




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資源4分の1

中国の漁獲量を加味すると、日本海スルメイカの資源量は15年度から減少傾向で、昨年度は約51万トン。
ピークだった1997年度の約201万トンに比べ、昨年度は4分の1に減ったとみられることが分かった。

日本海スルメイカは、東シナ海などで産卵して北上し、大和堆付近を経由して函館近海に来遊するため、日本海の資源量減少に合わせるように函館の水場げも減少の一途をたどる。

函館市水産物地方卸売市場のスルメイカ取扱量は昨年度、ピークの99年度の3%に満たない1283トンまで落ち込んだ。
本年度は6〜11月で1042トン。
漁期は残り2カ月ほどとなったが、過去最低だった昨年度並みの不良が続く。




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日本海で中型船を操業する函館の水産会社「天海」の西谷憲夫社長は「中国漁船に根こそぎ取られている。水揚げは数年前の3分の1に減っており、このままでは会社があと何年持つか」と漏らす。
函館頭足類科学研究所の桜井泰憲所長は「長期的な不漁は、海水温上昇など環境変化だけでなく、乱獲の影響も大きい。日本だけが資源管理をしても意味がなく、管理の国際的な枠組みが必要」と強調する。(関口潤、和田樹)



210320-201220 1面中国船違法操業



201219 ミサイル防衛 敵基地攻撃認められぬ

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'20/12/19付北海道新聞朝刊7面の社説

ミサイル防衛 敵基地攻撃認められぬ

政府がきのう、ミサイル防衛に関する新方針を閣議決定した。

歴代政権が否定してきた「敵基地攻撃能力の保有」については直接触れない一方で、敵の射程圏外から攻撃できるスタンド・オフ・ミサイルの開発を盛り込んだ。

敵基地攻撃能力を巡っては、安倍晋三前首相が退陣間際の談話で保有に向けた議論を促していた。

保有憲法に基づく専守防衛の原則に反し、認められない。

今回は保有を巡る判断を先送りする形を取りながらも、敵基地攻撃に転用可能な長射程のミサイル開発方針を明示し、保有への一歩をさらに踏み出したと言える。

「抑止力の強化」に名を借り、なし崩し的に専守防衛を形骸化させることは許されない。




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敵基地攻撃には公明党が否定的で、自民党内でも異論がある。

政府は、憲法の趣旨に反する政策を撤回するべきだ。

専守防衛から逸脱しかねない政策としては、安倍前政権が2018年に策定した防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画に、長距離巡航ミサイルの配備や、事実上の空母保有などが盛り込まれてきた。

これまでは外国製の装備が主体だったが、新方針には、国産の地対艦誘導弾の飛距離を大幅に延ばし、スタンド・オフ・ミサイルとして開発することが明記された。

菅義偉政権が前政権の防衛政策を検証することもなく、逆に加速させているのは看過できない。

さらに問題なのは、山口、秋田両県への配備を断念した地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」計画の代替策だ。 イージス艦2隻を新造し、海上自衛隊に運用を担わせることを明記した。




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導入コストだけで5千億円以上かかるとされ、30年間の運用経費を含めると総経費は7千億円以上になるとの試算もある。

地上イージスのレーダーを転用する上、洋上での維持管理費は割高なため、経費がさらに膨らむ可能性も否定できない。

断念した地上イージスは当初、経費を4千億円超と説明し、改修に伴う経費の膨張を理由に計画を撤回した。
焼け太りのようなイージス艦の新造は筋が通るまい。

地上イージス導入は、トランプ米政権に巨額の貿易赤字解消を迫られる中で進められ、運用次第では憲法の制約を超えた敵基地攻撃能力を有するとの指摘があった。

地上配備は断念したが、その能力を艦上に移すのが新方針だ。
米国の政権交代を機に問題点を洗い出し、白紙で見直す必要があろう。



210318-201219 7面社説ミサイル防衛



201212 「安倍派」復活 阻む「桜」

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210315-201212付北海道新聞朝刊23面の記事

ガバメント 舞台裏を読む

「安倍派」復活 阻む「桜」

「辞めてすぐ(の復帰)は早いかな。来年、衆院選の前か後か、どちらかに(派閥に)帰りたい」

安倍晋三前首相は11月初旬、出身派閥の細田派(清和政策研究会)について余裕で周囲に語った。
祖父岸信介元首相の流れをくみ、父安倍晋太郎元外相が率いた派閥だ。
2度目の自民党総裁に就任する2012年に離脱したため、看板こそ細田派だが、自身が戻って領袖に就くのは既定路線でもあった。

9月16日の辞任の12日後、細田派の政治資金パーティーでは「まだ清和研の一員ではないが、もともとは出身だ」と冗舌に語った。
しかし11月下旬、「桜を見る会」前日の夕食会を巡る疑惑が再浮上し、空気は一変した。
「安倍さんが派閥に戻るのはしばらく先送りだ」。
細田派中堅は厳しい表情で話す。




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狙うは「キングメーカー

長期政権の実績を背景に、98人の党最大派閥を率いて影響力を保つ。
安倍氏が思い浮かべていたのは、かつて党に君臨した「キングメーカー」の姿だった。
田中角栄氏、竹下登氏らは、首相退任後も、事実上その後の首相を決め、隠然たる力を示した。

実際、安倍氏は自身の後継を決める総裁選で、それまで「禅譲」を示唆していた岸田文雄氏の支援には回らず、菅義偉新首相の流れを決めた。
批判的だった政敵の石破茂氏を追い落とすことにも執着し、周囲に「できれば3位にしたい」と漏らした。
細田派の一部の票が2位の岸田氏に流れたとされる

辞任の理由となった持病の潰瘍性大腸炎は最近、新薬の効果で回復している。
党内からは「辞める必要はなかったのではないか。再々登板もあり得る」(ベテラン議員)との見方すら出ていた。
退任後に別の人物を挟んで首相に3度以上就任したのは、ともに安倍氏の同郷の伊藤博文桂太郎しかいない。




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桜を見る会」前日の夕食会を巡る問題は、昨年11月から国会を紛糾させてきた疑惑だった。
「東京都内のホテルで1人5千円の会費は安すぎる」。
野党側は、実際にかかった費用との差額を安倍氏側が補填していたのではないかと、繰り返し追求した。

安倍氏は「大多数がホテルの宿泊者という事情を踏まえ、ホテルが設定した価格だ」と説明。
補填はしておらず、明細書は作っていないと一貫して主張した。
野党議員からホテルに書面で確認するよう求められると「私がうそをついているというのなら、説明するのはそちら側だ」と色をなして反論した。




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1年後に発覚したのは、当時の野党の追求をなぞるような内容だった。
ホテル側が明細書を作っており、安倍氏側が費用の一部の900万円を補填していた疑いだ。
東京地検特捜部が、後援会代表の公設第1秘書らを任意で事情徴収したことも判明した。

明細書の存在が事実であれば、これまでの論拠は根底から崩れる。
国会で堂々と虚偽の答弁を繰り返していたことにもなる。
野党は「安倍氏が明細書の存在を知らなかった訳がない」と指摘し、安倍氏の国会招致を要求。
安倍氏は記者団に「その段階で事実と思われる事柄を答弁した」と釈明した。




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特捜部は政治資金規正法違反(不記載)の罪で第1秘書を略式起訴する方向で検討しているとみられ、安倍氏は自身の関与を否定する可能性がある。

ただ、自民ベテラン議員は「国会で事実と違うことを答弁してきた。何らかの説明は必要だ」と指摘。
安倍氏実弟岸信夫防衛相も「政治家であれば当然自分の行動には責任を持たなければいけないし、有権者に説明する責任がある」と強調した。




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求心力低下 政界に波紋

安倍氏の求心力低下は、政界にさまざまな波紋を広げる。
来年の総裁選をにらみ細田派は、下村博文政調会長西村康稔経済再生担当相が出馬に意欲を見せ、稲田朋美元防衛相や萩生田光一文部科学相の名も挙がり、落ち着かない。
かつて権勢を振るった田中派竹下派は、大きくなりすぎて結局分裂した。
細田派幹部は「安倍さんという『重し』がないと、派閥は割れるかもしれない」との懸念を漏らす。

再々登板のうわささえあった安倍氏の失墜は、現政権に打撃を与えつつも、短命との見方があった菅氏のライバルが消えることにもつながる。
永田町では「捜査は、首相が仕掛けたのではないか」(野党議員)という根拠のない陰謀論まで飛び交う。




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安倍氏は自粛モードに入った。
11月末にセミナーを開いた細田派中堅は「直前に安倍さんから『かえって迷惑かける』と欠席を伝えられた」と明かす。

07年までの第1次政権が失意の中に終わり、再起を果たした安倍氏は、負けず嫌いで「執念深い政治家」(周辺)だ。
66歳は政界では若いと言われる。

厳しい指摘が相次ぐ中、安倍氏は何を思うのか。
国会内で記者団の質問に答えた今月4日。
きびすを返した後さらに声を掛けられると「背中を向けた段階で、ぜひ、言わないでいただきたい」と言い返した。
笑みを浮かべていたものの、早口でまくしたてる姿にはいらだちがにじんでいた。

(吉田隆久)   

 

 

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