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'14/08/05の朝日新聞 読者の疑問に答えます 強制連行 1-3

PB062463
'14/08/05の朝日新聞 読者の疑問に答えます 強制連行 1

疑問 政府は、軍隊や警察などに人さらいのように連れていかれて無理やり慰安婦にさせられた、いわゆる「強制連行」を直接裏付ける資料はないと説明しています。
強制連行はなかったのですか。


自由を奪われた強制性あった
慰安婦問題に注目が集まった1991〜92年、朝日新聞朝鮮人慰安婦について、「強制連行された」と報じた。
吉田清治氏の済州島での「慰安婦狩り」証言(次項で説明)を強制連行の事例として紹介したほか、宮沢喜一首相の訪韓直前の92年1月12日の社説「歴史から目をそむけまい」で「(慰安婦は)『挺身隊ていしんたい』の名で勧誘または強制連行され」たと表現した。


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当時は慰安婦関係の資料発掘が進んでおらず、専門家らも裏付けを欠いたままこの語を使っていた。
秦郁彦氏も80年代半ば、朝鮮人慰安婦について「強制連行に近い形で徴集された」と記した=注①。


注①「従軍慰安婦(正続)」陸軍史研究会編「日本陸軍の本 総解説」(自由国民社、1985年)


もともと「朝鮮人強制連行」は、一般的に、日本の植民地だった朝鮮の人々を戦時中、その意思とは関係なく、政府計画に基づき、日本内地や軍占領地の炭鉱や鉱山などに労働者として動員したことを指していた=注②。

注②外村大「朝鮮人強制連行」(岩波新書、2012年)

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60年代に実態を調べた在日朝鮮人の研究者が強制連行と呼び=注③=、メディアにも広がった経緯もあり、強制連行は使う人によって定義に幅がある。
注③朴慶植朝鮮人強制連行の記録」(未来社、1965年)


こうした中、慰安婦の強制連行の定義も、「官憲の職権を発動した『慰安婦狩り』ないし『ひとさらい』的連行」に限定する見解=注④=と、「軍または総督府が選定した業者が、略取、誘拐や人身売買により連行」した場合も含むという考え方=注⑤=が研究者の間で今も対立する状況が続いている。

注④秦郁彦「『慰安婦狩り』証言 検証・第三弾 ドイツの従軍慰安婦問題」「諸君!」1992年9月号
注⑤吉見義明「『河野談話』をどう考えるかーその意義と問題点」「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクションセンター編「『慰安婦』バッシングを越えて」(大月書店、2013年)


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