Cameraと散歩

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140912 記事取り消しが、なぜ遅くなったのか

PB242533
140912 吉田調書をめぐる本社報道 経過報告

記事取り消しが、なぜ遅くなったのか
他社の報道後も、当初は考え変えず


朝日新聞の記事に対しては、掲載直後から、ジャーナリストらが「誤報だ」「決死の覚悟の人たちをおとしめている」などとブログや週刊誌などで批判を展開した。


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報道・編成局の担当者らは、取材班から「吉田所長がすぐに戻れる第一原発構内での待機」を命じたことは間違いないなどの報告を受けた。
①記事は原発事故取材に実績のある記者らが関わっていること②批判する人たちが「吉田調書」全文を持ち合わせていないと思われることーーから、記事内容に誤りはないと判断。
必要であれば抗議するなどの対応をとった。
この段階ではまだ社内での調査は始まっていない。


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社内では批判にこたえる紙面をつくることを取材班を含め何度か検討したが、紙面化には至らなかった。

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8月18日に産経新聞が吉田調書を入手したと報じたのを始め、様々なメディアが相次いで「吉田調書を入手した」と報じ始めた。
その内容は、吉田氏が調書の中で第二原発への退避は当初の意図とは違うが結果的に正しかったとの認識を示していることを取り上げ、朝日の記事の印象とは異なるものだった。


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この段階でも、東電の内部資料など「命令」を裏付ける資料などがあったことから、所員らが第二原発に退避したことを外形的に「命令違反・撤退」と解釈できると判断していた。

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メディアだけでなく読者からも疑問の声があがってきた。
8月下旬、編集幹部が、報道・編集局に吉田調書の内容について点検を指示した。
吉田調書については、情報源の秘匿の観点から少数の記者しか目を通していなかったからだ。


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取材班とは別の報道・編成局の数人が担当となり、吉田調書の内容と客観的な資料などをつきあわせて検討したが、外形的な事実に誤りはないとして「命令違反と解釈できる」との考えは維持した。

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しかし、その後も取材班や関係した記者らから話を聞くなどし、追加で取材した所員の証言などを分析。
その結果、①見出しにもなった「命令違反で9割の所員が撤退」という記事の根幹にかかわる表現が誤りだった②吉田調書の内容のうち本来記事に盛り込むべき証言を入れていなかったーーことがわかり、記事の裏付けが乏しいと判断した。


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このため、記事の根幹部分が揺らいだことなどから、語句の修正だけでは読者の理解が得られない、と考え、訂正より重い「取り消し」という判断をした。