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141117 政府は国際社会で反論を

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’14/11/17の北海道新聞朝刊 12面

慰安婦問題 識者の見方は


政府は国際社会で反論を

東京基督教大教授 西岡 力さん



慰安婦を論じるには、現在の視点だけでなく、当時の社会的背景を考慮に入れる必要がある。
戦前の日本と朝鮮では、深刻な貧困を背景に、今とは違って合法だった売春業に身を置かざるを得ない女性の存在が珍しくなかった。
それが戦地に移されたのが慰安婦だ。


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親の借金を肩代わりするための身売りや、仲介業者にだまされた事例も多く、女性の人権侵害があったのは間違いない。
ただ貧困は軍の責任ではないし、強制連行の事実も確認されていない。
軍の関与は悪質な仲介業者の取り締まりや慰安婦の保健管理にとどまっており、韓国政府が在韓米軍向けの慰安所を管理してきたのと同じ構図だ。


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慰安婦には接客の拒否や廃業の自由もあり、一部で指摘されるような「性奴隷」には当たらないだろう。
インドネシアで日本の軍人がオランダ人女性を連行し暴行した事件は、厳格に処罰された戦時性暴力で、慰安婦とは別の問題だ。


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韓国でも戦前の事情を知る人が多くいた時代には、慰安婦は問題にされなかった。
現在のような国際問題に発展したのは1980年代以降で、日本の非政府組織(NGO)などの呼び掛けで名乗り出た元慰安婦が日本政府に補償を求めて提訴し、メディアで取り上げられたのがきっかけだ。


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その証言はたびたび変遷し、裏付けもないことが多く、慎重に扱うべきだったが、日本政府は韓国との摩擦を避けるため、事実を検証しないまま「河野談話」などで曖昧に迎合してきた。
正面から反論せず、その場しのぎの対応で問題を先送りしてきた結果、「強制連行」などの誤解が独り歩きしている。
慰安婦を勤労動員の「女子挺身ていしん隊」と混同して「性奴隷20万人」とし「多くが軍に殺害された」などとする国連「クマラスワミ報告」もその一つだ。


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海外では「ナチスと同じ人道に対する罪」と指弾する向きもあるが、国際社会では反論しなければ認めたことになる。
政府は事実を検証し、誤解を解く努力をすべきだ。


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