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190122 日韓関係改善 糸口見えず レーダー協議打ち切り

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’19/01/22付北海道新聞朝刊3面の記事

日韓関係改善 糸口見えず レーダー協議打ち切り

日本 米朝見据え「決着」 / 韓国 「証拠ない」反発


防衛省は21日、韓国海駆逐艦による火器管制レーダー照射問題をめぐる「最終見解」を発表し、韓国との実務者協議の打ち切りを一方的に宣告した。

韓国側が事実関係を重ねて否定する中で、2月末ごろの米朝首脳再会談の実施が決まり、対北朝鮮で連携を探る韓国との防衛協力に悪影響を及ぼしかねないと判断した。

ただ、韓国国防省の主張を「信頼性に欠け、事実と全く異なる」と断じた最終見解に韓国側は激しく反発し、問題はかえって泥沼化の様相を強めている。




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「無意味」と強調

「韓国側に、相互主義に基づく客観的かつ中立的な事実認定に応じる姿勢が見られない」。

防衛省は最終見解で韓国政府の一連の対応をこう非難し、これ以上の実務者協議が「無意味」であることを強調した

日本政府はレーダー照射問題を巡り、昨年12月20日の発生直後から強気の姿勢を貫いてきた

火器管制レーダーの勝者は不足の軍事衝突を招きかねず、「強い態度で抗議しなければ中国や北朝鮮などに誤ったメッセージを送りかねない」(官邸筋)からだ。




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日韓双方の主張は食い違い続けている。

防衛省の解析では、火器管制レーダー特有の電波が複数回照射されたことが確認されたが、韓国側はどうレーダーの使用を全面否定し、「遭難した北朝鮮船舶の救助のための探索レーダーを使っただけ」などと主張。

防衛省が昨年末、照射の場面を撮影したとする動画を公開すると、韓国側も即座に反論する動画を作成し、むしろ日本側に「低空での威嚇飛行」への謝罪を求めた。




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急速に冷え込み

さらに、日本側のデータの相互開示提案に対して韓国側が「無礼」と反発するなど非難の応酬に発展。

韓国の慰安婦支援財団の解散決定や、韓国最高裁が日本企業に賠償を命じた元徴用工訴訟判決なども重なり、日韓関係は急速に冷え込んだ。

日本外交筋からは「どこかで軌道修正を図るべきだ」との声が出ていた。

北朝鮮の非核化に向けた米国のトランプ大統領北朝鮮の金星オン金正恩キムジョンウン朝鮮労働党委員長による2回目の首脳会談を2月末ごろに控え、対北朝鮮政策で米国と連携する日韓の不協和音がこれ以上深刻化するのを避けたかったのも日本側の本音だ。

安倍晋三首相が目指す日本人拉致問題の解決に向けた日朝首脳会談を実現するには、韓国政府の協力が欠かせない事情もあった




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ただ、防衛省の最終見解は日韓防衛協力を重視する姿勢を強調しつつ「韓国側が事実とは全く異なる主張を繰り返している」とも指摘。

レーダー照射の新証拠として哨戒機内で記録した電波信号の音声も公開し「韓国との協議には見切りを付けたが、あくまで日本の主張が正しい」(首相周辺)ことを国際社会に印象付けることを狙った

韓国側が非を認めなくても、各国から厳しい視線が注がれれば、再発防止を図ることができると期待する。

これに対し、韓国国防省報道官は21日、日本側が公開した音声は証拠にならないとして「正確な証拠を提示し、科学的で客観的な検証に積極的に応じることを促す」と述べた。

日本側の協議打ち切り方針を受け入れず、韓国側が追及を続ける可能性もある。




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韓国側も主張の正当性を国際社会に訴える動画を作成し、英語や中国語など計8限後で公開している。

駆逐艦は火器管制レーダーを照射していないという従来の立場を変える気配はなく、日韓のアピール合戦が過熱する懸念もある。

最終見解の公表に踏み切った日本政府に対し、韓国外交筋は「慰安婦問題や徴用工問題などの難題も山積しているのに、本当に韓国との関係を改善する気があるのか」と猜疑心を強める。

河野太郎外相と韓国の康京和カンギョンファ外相は23日にスイス・ダボスで会談する予定だが、両国が歩み寄る可能性は低いとみられている。

日韓関係改善の糸口は当面、見つかりそうもない。(上家敬史、ソウル 幸坂浩)




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日韓の懸案を巡る双方の主張

火器管制レーダー照射問題
日本 不測の事態を招きかねず、自衛隊員の生命にかかわりかねない極めて危険な行為で、あってはならない(岩屋毅防衛相)
韓国 事実を歪曲したり、対立を助長する意図で不正確な内容を一方的に主張したりするのは望ましくない(韓国国防省のコメント)

元徴用工問題
日本 韓国政府が具体的な措置を取らず、原告側による差し押さえの動きが進んている。極めて深刻で遺憾(菅義偉官房長官
韓国 日本政府はもう少し謙虚な立場を持たねばならない(文在寅大統領)

慰安婦巡る財団解散
日本 日韓合意に照らして問題。到底受け入れることはできない。(菅氏)
韓国 被害者中心主義の原則の下、多様な意見集約の結果などに基づき 解散を進める(陳善美女性家族相)



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金属音18秒「火器管制とすぐ分かる」海自幹部

「ザー」とも「ジー」とも聞こえる金属性の高い音が18秒間にわたり途切れることなく続く。

防衛省は21日、レーダー照射問題で、火器管制レーダーの電波を音に変換した記録を公表。

ごく短い時間の記録だが、海上自衛隊の幹部は「訓練を受けたものが聞けば火器管制レーダーとすぐに分かる」。

日韓の認識の隔たりを埋める重要証拠になると自信を示す。




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「いつ、どれくらいの距離でレーダーを探知できるのか、自衛隊の分析能力の評価にもつながるため極めて機密性が高い」。

公表された音の記録の元になった電波情報について、海自幹部はこう説明する。

火器管制レーダーによる音は、「機密を守る」との理由から加工された状態で防衛省のホームページで公開された。

ただ同省は、途切れることがない高温であることが、レーダー波の探知が周期的になる「捜索用」との違いを表していると強調。

幹部は「手の内を明かさずに出せるぎりぎりの内容だ」と話す。




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さらに防衛省は、韓国側が「威嚇するように低空飛行した」と主張していることを踏まえ、現場で対応した海自のP1哨戒機の飛行ルートも同時に公表した。

韓国海軍の駆逐艦との距離や哨戒機の高度などが盛り込まれた。

別の海自幹部は「詳細に記されている。適切に反論できる内容だ」とし、正当性アピールに十分な内容だと評価する。

防衛省は21日の公表内容を「最終見解」とするが、これまでの経緯から韓国側が受け入れないとの見方は省内に多い。

幹部は、問題解決が見通せないことに関し「韓国との連携は極めて重要。落としどころをどうするのか。早く決着をつけてほしい」と漏らした。




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米国の意向働いた可能性
静岡県立大の小針進教授(韓国社会論)の話
 
日韓双方にとって何の特にもならない争いで、お互いのプライドが対立したままとなってしまった。
北朝鮮との緊張が緩和する中、韓国にとって日本の優先順位が下がっていることが、文在イン(ムン・ジェイン)政権が妥協的な対応を避けることにつながったのではないか。
今回日本が幕引きを図ったのは、来月に米朝会談が開かれる可能性が高く、日韓の対立を望まない米国の意向が働いたのかもしれない。
今後は日韓の関係改善が必要だが、これだけこじれてしまったので時間がかかるだろう。




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火器管制レーダー照射問題 
昨年12月20日に石川県の能登半島沖で、韓国海軍の駆逐艦海上自衛隊のP1哨戒機に火器管制レーダーを照射したとされる問題。
防衛省の公表に対し、韓国国防省は照射を否定。
韓国側は、遭難した北朝鮮船舶を創作するためにレーダーを使用しただけで、むしろ哨戒機が低空飛行で接近してきたとして日本側を非難した。
日本側が、哨戒機が撮影した当時の映像を公開すると韓国側も動画を作成し反論。
2度の実務者協議でも双方が主張を譲らず、議論は平行線をたどっている。



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