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190720 「徴用工」不信の連鎖  仲裁委設置 韓国拒否 / 解決案提示に日本「無礼」

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'19/07/20付北海道新聞朝刊5面の記事

徴用工」不信の連鎖
仲裁委設置 韓国拒否 / 解決案提示に日本「無礼」


河野太郎外相は19日、日本政府による元徴用工訴訟の仲裁委員会開催要請に韓国側が応じなかったことを受け、南官杓駐日韓国大使を外務省に呼び「国際法違反の状況を放置している」と抗議した。

南氏は両国企業が出資して原告に賠償相当額を支払うことを柱とする韓国政府の解決案を再提案したが、河野氏は「極めて無礼」と拒否。

徴用工問題から派生した日本の輸出規制強化を巡っても両国は互いに批判を強め、「不信の連鎖」に陥りつつある。   (仁科裕章、ソウル 幸坂浩)




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輸出規制も双方譲らず

「提案は全く受け入れられないと以前伝えている。知らないふりをして改めて提案するのは極めて無礼だ」。

河野氏は韓国政府が6月に示した解決案に南氏が言及した瞬間、言葉を遮って非難した。

韓国外務省は即日,外交ルートを通じて「河野外相が見せた態度こそ無礼だった」と日本政府に抗議。

仲裁委を巡る日韓協議は、双方が感情的な言葉をぶつけ合う異例の展開となった。




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日本政府は1965年の日韓請求権協定を根拠に、両国の請求権問題は解決済みとの立場だ。

日本企業に賠償を命じた元徴用工訴訟判決はその協定を根幹から揺るがしかねず、日本企業の負担が発生する韓国の解決案も「話にならない」(首相官邸筋)と断じる。

このため河野氏は会談で日本企業に実害が生じないよう「直ちに是正措置を取ることを強く求める」と要求。

日本側の強硬姿勢の背景には、仮に日本企業の資産が現金化され、原告側に支払われれば「他国も日本の戦後処理の問題を蒸し返しかねない」(日本外交筋)との危機感がある。

日本政府が発動した半導体材料の対韓輸出規制強化も、韓国政府に問題解決を迫る「圧力」にほかならない。

河野氏は会談後「韓国に対し必要な措置を講じていく」との外相談話を発表し、さらなる対抗措置の発動を示唆した。

だが、通商を盾に韓国を揺さぶる日本の戦略は国際社会の厳しい視線にさらされるリスクを伴う。

南氏は会談で日本の輸出規制強化に「両国民と企業が困難な状況に陥り、被害が発生している」と批判。

実際、韓国の半導体は世界の電気製品に広く用いられており、韓国側は「全世界の消費者に否定的な影響を及ぼす」(産業通商資源省幹部)と発信を強めている。




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日本は規制強化について「輸出管理を適切に実施する観点からの運用見直し」と正当性を訴えているが、韓国は世界貿易機関WTO)の原則に反し、自由で公正な貿易体制を脅かすと主張。

韓国大統領府の金鉉宗国家安保室第2次長は19日の記者会見で「むしろ国際法に違反しているのは日本だ」と撤回を求めた。

韓国世論の反日感情の高まりを受け、文在寅政権の強気の対日外交は当面続く見通しで、日韓双方に出口戦略を探る気配はまだ見えない。


191007-190720徴用工不信の連鎖