Cameraと散歩

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200713 第三の新居 7の4

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履 歴 稿    紫 影子  

香川県
 第三の新居 7の4


私は、「誰かな」と言った軽い気持ちで、その人の顔を覗いたのだが、その途端私はギクッとさせられた。
と言うことは、その人が、私の担任であった柳原と言う先生であったからであった。

この私の担任であった柳原先生と言う人は、とても温厚な人物であって、嘗ては私の父も薫陶を受けたと言う先生であった。

「アッ、先生だ」と判った瞬間の私は、狼狽と言うよりも、その、ふしだらであった行為に対する自責から、思わず立竦んでしまったものであった。




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その夜、両親から懇懇と説諭をされた私は、翌朝父に附添われて学校へ行った。

教員室に柳原先生を尋ねた父は、保護者としての立場から不肖の子の不都合を大いに詫びて勤先の税務署へ出勤して行った。

あとに残された私は柳原先生から、「お前は勉強も良く出来るので、先生は喜んで居たのだが、今回はつまらんことをしてくれたなぁ。過ぎたことはもう仕様が無いが、これからは、もうあんなことをしたらいかんぞ。」と優しく諭されたのだが、当然厳しく叱責されるものと覚悟をして居た私は、こうした先生の温情が身にしみて、「鳴呼、申訳のないことをしてしまった。」と言う自責感に胸がつまって泣き出してしまった。




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やがて、カラン、カランと始業の鐘を小使さんが廊下で鳴らすと、「もう良い。泣かんと教室へ行け。」と言って先生が、机上の教科書と出席簿を持って席を立った途端に附近の先生達が、「柳原先生、他の生徒への見せしめのために、その生徒を罰さなけりゃいかんですぞ。」と言って騒ぎたてたので、困惑した表情の先生は、止むを得ないと言った口調で、「お前が悪いんだぞ。先生方の言う事は決して無茶ではないぞ。そこに立っとって自分の悪かったことをよく考えとけ。」と言って、他の先生達と教員室から出て行った。



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それは柳原先生が言いつけたものと、私は今に思って居るのだが、先生の懲罰に従った私が、広い教員室に只1人残って、不動の姿勢で立って居ると、間もなく小使さんが這入って来て、柳原先生の椅子を指さしながら、「その椅子に腰をかけとれ。併し、授業が終わった鐘が鳴ったら、すぐに立つんだぞ。そうしないと他の先生方がうるさく言うからな。」と言ってくれたので、私は小遣いさんの言うとおりにした。



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私は四年に進級する時にも、通信箋は優等の成績であった。
併し、この事件の関係であったと思うのだが、優等生としての賞状は貰えなかった。