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200603 日韓、再び相互不信  解決策描けず 審理長期化か  WTO提訴再開へ

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'20/06/03付北海道新聞朝刊8面の記事

日韓、再び相互不信
解決策描けず 審理長期化か
WTO提訴再開へ


韓国政府が2日、日本の対韓輸出規制強化措置を巡る政府間対話に見切りを付け、世界貿易機関(WTO)の判断に決着を委ねた。

韓国の貿易管理上の問題点を解消したにもかかわらず、措置撤回に応じない日本政府の態度にしびれを切らした。

日本政府は韓国側が強硬姿勢に突如転じたことに苛立ちを募らせており、日韓は再び相互不信に陥りつつある。




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「今の状況は、紛争解決手続を停止する条件だった『正常な対話の進行』とはみなせない」。

韓国産業通商省羅承植貿易投資室長は2日の記者会見で、WTOでの紛争解決手続を再開する原因は措置撤回の意志がない日本側にあるとの認識を強調した。

韓国側はこれまで、日本の要請に応じて軍事転用可能な部品や素材を輸出する際の管理体制拡充や関連法の整備を推進。

輸出規制強化措置を撤回する全ての条件は満たされた」(貿易当局者)として日本側に措置撤廃を求めてきた。




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これに対し、日本の経済産業省は強化された輸出管理体制の運用実態を見極めない限り、韓国側の要求には応じられないとの立場を堅持。

日本側の実態調査がどれほどの期間を要するのかも不明確で、韓国政府は「日本に問題解決の意志はない」と判断した。

韓国は近く、裁判の「一審」に当たる紛争処理小委員会(パネル)の設置をWTOに要請する方針。

「2審」に当たる上級委員会もあり、日本が自国の輸出管理は正当と主張する中、審理は長期化が予想される。




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それでも韓国が手続き再開に踏み切ったのは、日本の措置が不当であるとの認識が国際社会で共有されれば日本は撤回を迫られると判断しているからだ。

貿易当局者は「審理を通じて日本の不当性を客観的に立証する」と強調する。

韓国は日本からの輸入に依存してきた部品の国産化や中国製品への転換を進めており、「長期戦」になっても国内産業への影響は限定的とみる。

昨秋以降、事務レベルの対話を重ねて関係改善を模索してきた韓国政府が強硬姿勢に転じたことに、日本政府は不快感を隠さない。

茂木敏充外相は2日の記者会見で「当局間の対話を継続してきたにもかかわらず、韓国が一方的に発表を行った事は遺憾だ」と批判。

自民党幹部も「韓国政府による国内向けのパフォーマンス」と皮肉った。




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日本政府は措置を撤回するには、韓国の改善策の効果を見極める必要があると表向き主張するが、「韓国が元徴用工問題の解決策を講じない限り、輸出管理で一切譲歩しない」(日本交渉筋」のが基本路線だ。

ただ元徴用工問題を巡る政府間協議は進展せず、結果的に輸出管理の問題も解決の道筋を描けずにいる。

日本政府高官は「韓国が膠着状態の打開を狙って日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)破棄を再度ちらつかせる可能性もある」と警戒感を強めた。

(ソウル 上家敬史、東京報道 則定隆史)

 

201002-2006038面日韓、再び相互不信