'20/07/09付北海道新聞朝刊2面の記事
「敵基地攻撃」巡り攻防 イージス断念受け衆院委
野党、専守防衛の原則強調 防衛省「現憲法範囲で議論」
衆院安全保障委員会は8日、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画断念を受け、閉会中審査を開いた。
新たなミサイル防衛策として安倍政権内で浮上する敵基地攻撃能力を巡り、河野太郎防衛相が現行憲法の範囲内で保有の是非を検討する考えを示したのに対し、野党は専守防衛の原則から反対を主張。
地上イージスに関しては、与野党が計画の断念に至る一連の経緯を追求し、詳しい検証を求めた。
政府が6月24日に秋田、山口両県への配備断念を決定して以降、国会審議は初めて。
敵基地攻撃能力について、2017年に地上イージス導入を決定した際の防衛相だった自民党の小野寺五典氏は保有論を主張。
「わが国を守り抜くためにも相手のミサイル基地をたたく能力を持つべきだ」と迫ったのに対し、河野氏は「現行憲法の範囲内で何が適切なのか。与党の意見も受け止めながら政府内で議論したい」と述べた。
野党からは立憲民主党の篠原豪氏が「敵基地攻撃で許されるのはミサイル本体で、発射台や基地の攻撃は違憲ではないか」と指摘。
河野氏は憲法上必要最小限度での敵基地攻撃は可能とするこれまでの政府見解を踏まえ「自衛の範囲に含まれる」とかわした。
立憲の本多平直氏は、敵基地攻撃に必要な能力を質問した。
河野氏は「ミサイル位置を正確に把握し、防空用レーダーも無力化しなければいけない。制空権を確保した上で発射装置や施設を攻撃する。こうした一連の能力が必要」と説明した。
地上イージス配備計画の断念に至る経緯を巡っては、小野寺氏が「防衛省は精緻な分析をしていたのか。努力が足りなかったので、地元の皆さんに正確な説明をしていなかった。安全保障上大きな穴があく」と厳しく批判。
迎撃ミサイルのブースターを自衛隊演習場内などに確実に落とせない技術的問題を、突然公表した防衛省の対応に不信感を示した。
河野氏は「地元の皆さまに本当にご迷惑をお掛けした」と改めて謝罪。
野党からも一連のプロセスの検証を求める意見が相次ぎ、応じる考えを示した。
9日には参院外交防衛委員会が閉会中審査を開く。
(仁科裕章、田上工幸)