'20/12/29付北海道新聞朝刊4面の記事
日韓合意5年 慰安婦問題 遠い解決 少女像続く対立/訴訟判決で関係悪化も
【ソウル上家敬史】日韓両政府が慰安婦問題の「最終的な解決」で合意してから28日で5年が経過した。
ただ、被害者中心主義を掲げる文在寅政権は合意を事実上空文化し、韓国では日本政府の責任を追及する声が絶えない。
来年1月には元慰安婦らが日本政府に損害賠償を求めた訴訟の判決が出る予定で、裁判所の判断次第では日韓の亀裂が決定的になりかねない。
「合意の履行を求める日本政府の立場に変わりはないが、支持率低下にあえぐ文政権には期待できない」。
日本外務省幹部は日韓合意から5年が過ぎたことを受け、こう嘆いた。
2015年の合意は、日米韓連携を重視する当時のオバマ米政権の後押しで実現。
日韓両政府は①安倍晋三首相が「おわびと反省の気持ち」を表明②日本政府は元慰安婦を支援する「和解・癒やし財団」に10億円を拠出し、日韓が協力して全ての元慰安婦の名誉と尊厳の回復のための事業を行う③韓国政府は日本大使館前の少女像について「適切な解決へ努力する」ーことで合意した。
さらに、財団に関する措置を実施するとの前提で「最終的かつ不可逆的に解決される」ことを確認した。
だが、朴槿恵氏が17年に不祥事で罷免されると、政権に就いた文在寅大統領は日韓合意を「元慰安婦の意見が十分反映されていない」と批判し、財団を解散。
韓国政府は合意の見直しを日本に求めないと説明したが、日本側は「国家間の約束が一方的にほごにされた」と対韓不信を強めた。
大使館前の少女像は撤去されておらず、今年9月には、韓国系団体がドイツの首都ベルリンに新たな像を建てるなど設置の動きは各国に拡散。
韓国最高裁が日本企業に賠償を命じた元徴用工問題を巡っても、日韓両政府は解決の糸口を見いだせないままだ。
ソウル中央地裁は来年1月、元慰安婦と遺族が日本政府に損害賠償を求めた2件の訴訟の判決を出す予定。
慰安婦支援団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」は28日、「日韓合意は既に死亡した」との声明を出し、地裁に賠償命令を出すよう迫った。
日本政府は、国家が他国の裁判の対象にならないという国際法上の原則「主権免除」を理由に棄却を求めているが、仮に地裁が原告の主張を認めれば、日韓合意に著しく反する事態となる。
日韓両政府内には、オバマ前米政権で副大統領を務めたバイデン次期大統領が日韓関係改善の仲介に乗り出すことに期待する声もあるが、日韓外交筋は「判決次第で日韓関係の修復は困難になる」と指摘した。
201229 日韓合意5年 慰安婦問題 遠い解決 少女像続く対立/訴訟判決で関係悪化も
