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210119 文氏「司法重視」一転 元徴用後訴訟 原告説得にも言及 具体策触れず 実行力に疑問符

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210618-’21/01/19付北海道新聞朝刊10面の記事

文氏「司法重視」一転
 元徴用工訴訟 原告説得にも言及
  具体策触れず 実行力に疑問符


 韓国の文在寅大統領が18日の記者会見で、元徴用工訴訟で賠償を命じられた日本企業の資産現金化に否定的な見解を示した。
「司法判断の尊重」を盾に元徴用工らへの賠償を日本企業に迫ってきた従来の姿勢から一転、日本政府と妥協点を見いだして原告を説得するとも主張した。
だが文氏は具体的な解決策に触れておらず、日本政府は「実行力」に懐疑的な見方を示している。




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 「韓日間で未来志向的に発展していかなければならない」。
文氏は18日の記者会見でこう述べ、日本政府とともに外交努力で元徴用工訴訟や従軍慰安婦問題を巡る対立の解消を目指すと表明した。
以前から繰り返してきた「司法判断を尊重する」との言い回しは一度も使わず、徴用工問題で日本側と解決策を見いだせれば原告を「最大限説得する」とまで語った。

 文政権は、日韓関係悪化を懸念する朴槿恵前政権の意向を酌んだ最高裁が元徴用工訴訟判決を意図的に遅延させた疑惑を追求。
文氏本人も大統領就任後、「司法介入」と取られかねない発言は努めて避けてきた。




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 その文氏が柔軟姿勢に転じた背景には、日米間3カ国の連携を重視するバイデン米新政府に対し、日韓対立の解消に努力する姿を印象付ける思惑があるとみられる。
文氏は夏の東京五輪が首脳外交の場になるとみており、南北対話再開の契機にするためにも、開催国・日本との関係改善を探る狙いもあるようだ。

 慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」をうたった2015年の日韓合意についても、過去には「重大な欠陥があった」などと断じていたが、この日は日本政府の立場に沿うように「両政府間の公式合意と認める」と語った。




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 だが、日本側はこうした文氏の「秋波」に冷ややかだ。
文氏は弁護士時代に元徴用工訴訟の原告代理人として活動。
1965年の日韓請求権協定で問題は解決済みとする日本の主張を受け入れるのは考えにくく、日本外務省幹部は「文政権が終わらない限り、状況は変わらない」と指摘する。

 日本政府に元慰安婦らへの賠償を命じた8日のソウル地裁判決を巡っても、日本側は「国際法上も二国間関係上も到底考えられない異常な事態」(茂木敏充外相)と是正を求めているが、被害者中心主義を掲げて元慰安婦らの主張を政策判断に反映してきた文政権が「日本に譲歩できる余地はほぼない」(日本外交筋)。
坂井学官房副長官は18日の会見で「韓国側の今後の行動をしっかり注視していく」とけん制した。

(ソウル 上家敬史、東京報道 広田孝明)




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