Cameraと散歩

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181024 宮崎哲也の時々砲弾 ノーベンバー・ステップス 3rd mov.

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宮崎哲也の時々砲弾
ノーベンバー・ステップス 3rd mov.


さて、吉成真由美編著『人類の未来』(NHK出版新書)に収録された、フィナンシャル・タイムズ経済論説主幹、マーティン・ウルフのインタヴューの内容をみてみよう。

何度も紹介したように、ウルフは世界で1番信頼されている経済新聞の、当代で最も影響力のある経済ジャーナリストである。
世界の投資家、各国の財務大臣中央銀行総裁ら実務家から注目されているだけではなく、多くのノーベル賞クラスの経済学者からもリスペクトされている。

この吉成氏による連続インタヴューに相応しい碩学なのだ。
経済記者といっても、日本の新聞紙面にゴミのような論説を書き散らしている経済部出の”茶坊主ジャーナリスト”と比べたら、それだけで礼を失する。




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ウルフはここで、ドルの基軸通貨としての未来、グローバル・エコノミーの進度に対応したグローバル・ガヴァナンスのあり方、国家主権と民主主義の行く末などについて、いつにもまして率直に談じているが、やはり刺激的なのは、日本経済の現状の見立てと将来の見通しであろう。

まずウルフは日本の財政状況を診断する。
「国の資産が負債をはるかに上回っていることは確か」だが、政府の負債がその「支払い能力を上回っている可能性」は十分にあると推す。

だが、デフォルト(債務不履行)を宣言するなど愚の骨頂であるし、「不必要なこと」だと断じる。彼は、日本政府はいつまで借金し続けられるかと問われ、「あと20年くらいは続く」と予測した上でこう述べる。




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「このような場合重要なのは、別のやり方、つまり政府がその債権者である国民に対して、妥当な総需要を保証する方向で働くということでしょう」
日本銀行は政府のコントロール下にあり、国民は政府を信頼しているので、これが可能になります。ですから政府がすべきことは、妥当な国内総需要を確保するための持続可能な政策を施行するということで、これは理にかなっていると思います」

性急な財政健全化よりもまず総需要拡大が優先されるべきであり、その方途としてウルフが提案しているのが企業の抱え込んでいる巨額の余剰資金の活用だ。
内部留保課税のような乱暴な方法ではなく、現実的な方策が挙げられている。




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法人税率を上げることです。日本では法人税を上げるのが適当だと思います」
いずれにしても、企業の内部留保や家計の保有する金融資産など、民間に滞留している2,000兆円を超える膨大なマネーを、いかにして投資や消費のかたちで動かしていくかが鍵となる。

景気回復、デフレ脱却のための金融政策、財政出動とは、詰まるところ、これを実現するための”呼び水”に過ぎない。

民間部門の過剰な黒字を公的部門に吸い上げて政府債務を解消することが財政再建捷径しょうけいだ。
だが、消費税増税のような縮小均衡への道を選んではならない。




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ウルフはさらに公然たる財政ファイナンスを提案する。
「つまり企業の内部留保という余剰を除かない限り、この負債はなくならないという事実を踏まえて、日本銀行国債を直接引き受ける、すなわち国債貨幣化マネタイズすることになるでしょう。/日本銀行国債のほとんどを保有することになるでしょうし、現在はどんどんそれらを貨幣化しています。国債を市場に再び売り出す可能性はなく、将来にわたって持ち続けることになるでしょう。日本の銀行は、日銀に多額の準備金を預けることになります。こうやって政府がどんどん国債を貨幣化して、市場にお金を拠出するわけです」




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時間は限られている。
いま総需要の拡大に躊躇したりしくじったりすれば、長期的には、20年から30年の後には悪性インフレに陥る虞がある。

だからこそ、現在は金融政策の「出口」を目論んだり、大規模な財政支出を厭ったりすべきではないのだ。

実に真っ当なマクロ政策だが、なぜかこの国では「禁じ手」扱いされる。

2017/11/16の週刊文春から

181023 mac OS Mojave インストール案内

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mac OS Mojave のインストールの案内があった。





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「詳細」をクリックすると App Store の画面が出て





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「アップデート」をクリックすると、”アップデートはありません”と出た。

当初のインストール案内は消えているので、インストールをクリックすることはできない。

このまましばらく使ってみる。

また、案内が表示されるだろうか。



181013 悪いアップル

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変見自在 高山正之

悪いアップル


90年代、米国に出ていた日本企業の半分が潰れた。
業績が悪かったのかと撤退する大手螺子ネジメーカーに聞いたことがある。

いや、こっちのビジネス風土に馴染めなくて。
それに尽きますという上品な答えだった。



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例えばボンバルディア社との取引だ。
昔はカナダの自転車屋
今はデ・ハビランドとか潰れた航空機企業をかき集めて旅客機まで作っている大会社だ。

いいお得意ができた。
生産ラインも広げ、大商いをした。
がが、入金ガない。



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逆に「製品の鍍金めっきの色が違う」とクレームが来た。
だから「廃棄した」と。
あんまりではというと「おかげで作業工程が遅れた。その責任を法廷で問うか考えている」。

訴えるという脅しだ。
一時が万事。
商売の数ほど泣き寝入りさせられた。

因みにボンバルディアは納入品を廃棄せずに使っていたことが後になって判った。
実際、米国の法廷で日本企業が勝つのは難しい。



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オフロードバイクでジャンプに失敗した白人少年がホンダを「空中でエンジンが失速した。一生車椅子生活にされた」と訴えた。
飛行機じゃああるまいし。

バイクは失速しない事を50万ドルかけた実験装置で証明してみせた。
しかし連邦地裁の評決は「ホンダは300万ドルを払え」だった。

評決理由が振るっている。
「ホンダに責任はないが、怪我した少年の将来を想えば金を出すべきだ」

これも後日談がある。
少年は元気に歩いていた。
車椅子生活は嘘だった。



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米国の法廷は米国人の利益のためにある。
それでも日本企業が1度だけ勝ったことがある。
貿易と財政の双子の赤字を抱えたレーガンがどうか雇用創出に協力してと日本企業に哀訴してきた。

ほだされた三菱自工イリノイ州に出た。
操業まで地方税免除の約束だったが、地元ノーマル市は「聞いていないなぁ」と尊大に課税した。
三菱は訴え、契約文書が決め手になって勝てた。

還付された税金はそっくりしに寄贈した。
勝ちを驕らない。
日本人らしい諦めだったが、育ちの悪いクリントンはそれが気に食わなかった。



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彼は大統領に就くとすぐ三菱を嵌める準備を始め、96年春「女子社員のセクハラをどんどんやれと助長した」と訴えた。
「日本人が持つ女性蔑視思想を米国に移植した」と。

特定の民族をステレオタイプ化して誹謗するのはナチだけではなかった。
人種偏見に満ちた訴えは米紙を喜ばせ、連日の紙面に嘘を書き立てた。
議会もはしゃいで不買を叫んだ。
三菱は負けを認めて3400万ドルを払った。

ノーマル市の仇をクリントンが取った。



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同じ頃米企業の商標を無断使用した件で文明堂商事がロス地裁に訴えられた。
文明堂側は日本での行為は日本に司法管轄権があると法の大原則を主張した。
米国に裁く権利はない。
そんな常識もないのかと。

そんな常識はなかった。
担当した判事M・リアルは「日本に主権があろうと当該事案に米国人や米企業が関わっていればすべて米国に司法管轄権がある」(94年10月19日)という決定を下した。
「米国の威光はよその国の主権を超える」というトンデモ判断だった。

彼は地裁所長でもある。
法曹界では所長格の判事の判断は判例に残す慣例があるが、さすがにこれには困ったらしい。

急ぎ上級審で破棄して「勝手に米国の法廷に引っ張れない」ことを世間に教えだが、それで米国人が納得するわけもない。



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アップル社は日本の下請けに「訴訟はすべて米国の法廷で」を飲ませてボンバルディアと同じような阿漕あこぎをやってきた。

腹に据えかねた下請けがアップルを訴えた裁判で東京地裁は「契約で司法管轄権は動かせない」とアップルの悪巧みを糺した。

戦後70年。
どろろ」の漫画みたいに日本の主権の一部がやっとこさ返ってきたような気がする。

’16.3.3 の週刊新潮より