Cameraと散歩

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221026 北海道似湾編 カケス 6の4

IMGR074-20

履 歴 稿    紫 影子  

北海道似湾編
  カケス 6の4


 「明日は、罠を作って必ず捕てやる。」と保君は言って居たのだが、Y形の二本の木と萩の木二本が、どんな作用であの鳥を捕えるのかと言うことは、私には全然想像がつかなかった。
 併し、私は「明日はかならず捕れる。」と言った彼の言葉が、頼もしく思えてとても嬉しかったので、その夜はなかなか寝つかれなかった。

 その翌日、学校から帰ると、早速保君は、鉈と細い麻の荷造紐を持って、物置の出入口の所から私を呼んだ。
 私は、早速筵の垂下って居る出入口から表へ出て二人で桂の木の下へ行って罠の工作に取りかかったのだが、勿論、私は保君の助手であった。




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 最初保君は、近くの柴木を数本弓状に絞って見て居たが、やがて適当なものが見つかったとみえて、その木の枝を切り払った、そうして彼は、その木を数回弓状に絞って弾力試験をして居たが、「よし、此奴に決めよう。」と呟いて、根元から二米程の所を残して上部を切り捨てると、再び弓状に曲げて「この儘にして持って居れよ。」と私に言いつけて自分は、昨日作ったY形の木を、弓状に絞った儘で私が持って居た柴木の先端の所へ約二十糎程を土中へ差込むと、残りの一本を其処から約七十糎程離れた所へ、矢張り二十糎程を土中に差込んだ、そしてその双方のY形を向き合わせた。

 それからの彼は、持って来た麻紐を二米程の長さに切って、その一端に拇指が潜る程の輪を作ると、残りの一端をその輪に潜らせて、その先端が四十糎程残るように、私が持って居た柴木の先端へ三巻程巻いて結つけると、「もう放してもいいわ」と言ったので、私がパッとその柴木を放すと、先端の麻紐に空中へ半円の弧を描かせて勢い良く跳返って揺れの止まるまで、その麻紐を揺ぶって居た。




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 それからの保君は、その柴とY形の木に、適当に短かく切った萩の木と麻紐を使って細工をして居たのだが、やがて完成したと見えて、「よし、今度は此奴」と、麻紐を垂れ下げた柴木を弓状に絞って、罠を仕掛けた。

 保君が罠を完成したのは、丁度昨日カケスが飛んで来た頃の時刻であった。
 待つ間も無く遥かな空から、群鳴くカケスの声が聞こえて来たので、「オイ、来たぞ」と言って二人は物置の中へ隠れたのだが、カケスは昨日と同じように六羽程の群れが飛んで来て桂の木に止まった。