’14/08/05の朝日新聞1面の署名記事
慰安婦問題の本質 直視を 編集担当 杉浦 信之
日韓関係はかつてないほど冷え込んでいます。
混迷の色を濃くしている理由の一つが、慰安婦問題をめぐる両国の溝です。
この問題は1990年代初めにクローズアップされ、元慰安婦が名乗り出たのをきっかけに議論や研究が進みました。
戦争の時代に、軍の関与の下でアジア各地に慰安所が作られ、女性の尊厳と名誉が深く傷つけられた実態が次第に明らかになりました。
それから20年余、日本軍の関与を認めて謝罪した「河野談話」の見直しなどの動きが韓国内の反発を招いています。
韓国側も、日本政府がこれまで示してきた反省やおわびの気持ちを受け入れず、かたくなな態度を崩そうとしません。
慰安婦問題が政治問題化する中で、安倍政権は河野談話の作成過程を検証し、報告書を6月に発表しました。
一部の論壇やネット上には、「慰安婦問題は朝日新聞の捏造だ」といういわれなき批判が起きています。
しかも、元慰安婦の記事を書いた元朝日新聞記者が名指しで中傷される事態になっています。
読者の皆様からは「本当か」「なぜ反論しない」と問い合わせが寄せられるようになりました。
私たちは慰安婦問題の報道を振り返り、今日と明日の紙面で特集します。
読者への説明責任を果たすことが、未来に向けた新たな議論を始める一歩となると考えるからです。
97年3月にも慰安婦問題の特集をしましたが、その後の研究の成果も踏まえて論点を整理しました。
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「軍の関与の下でアジア各地に慰安所が作られ、」→ 日本軍が慰安所をアジア各地に作ったらしい。
「元慰安婦の記事を書いた元朝日新聞記者」→ 『女子挺身隊』の名で戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた『朝鮮人従軍慰安婦』などと書いた。
「連行」は、本人の意志にかかわらず連れて行くことであり、「従軍」は、軍隊に従って戦地に赴くことである。