Cameraと散歩

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161011 口先文明

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変見自在 高山正之

口先文明


アフリカの民はより良い生活環境を求め、例えばマリの民は旧宗主国のフランスに移り住んでいく。
マリの民には女の子が初潮を迎えると、小陰唇と陰核を切除して大陰唇を縫い合わせる割礼儀式がある。
パリでそれをやって親が警察に捕まり、ここではそんなことをしてはならないと諭された。
彼らは今では旧宗主国の法律をきちんと守って暮らしている。


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白人たちはそれを文明化と言って喜ぶが、では彼らが新しい環境を求め、例えば米大陸に行った時はどうだったか。
彼らはそこに住む人から七面鳥をもらって厳しい冬を越すと、すぐ先住の人たちを殺し、土地を奪った。
パリに来たマリ人は習慣が合わないからと言って、パリジャンを皆殺しにして土地を取ったりはしない。


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彼らはオーストラリアでもアボリジニを皆殺しにした。
シドニーの中心街にニューサウスウェールズ州立の図書館がある。
その蔵書に昭和3年当時の日記があって「今日はアボリジニを17匹殺した」とある。
その結果、白人はエアーズロックグレートバリアリーフの素晴らしい大自然を手に入れた。
元豪首相ジョン・ハワードは「欧州人の入植がなければここが繁栄する国家にはならなかった」(朝日新聞2月18日)と先住民殺しを正当化している。
白人は文明人ではなかった。


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アボリジニ系の人々はスンダ列島に沿ってジャワの方へ広がり、マレー系の民と共存しているが、彼らのところにも白人はきた。
マレー半島に来た英国人はここにアフリカの油椰子と、ブラジルのゴム林を入れてマレー人にその採取をやらせた。
すずが出ると知ると、所嫌わず露天掘りをさせて毒性の高い鉱滓こうさいが周辺の森を丸裸にした。

英国人は彼らに僅かな賃金を払ったが、すぐ支那人が彼らに阿片を売りつけてそのカネを巻き上げた。
インドネシアにはオランダ人がきてもっと阿漕あこぎな搾り取り方をした。


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マレーシアが独立国家になった時、アヘンの中毒患者は10万人を超えていた。
マレーシアはその国土と人々を破壊した白人の統治の象徴に阿片を据えて「阿片を2グラム持てば懲役5年」「阿片15グラム以上の所持は死刑」と決めた。
周辺の旧植民地諸国もそれに倣った。

笑えるのはシンガポールで、ここは阿片を打って儲けた支那人が建てた国だが、その素性を隠すために同じように「阿片15グラムで死刑」の規定を持つ。

インドネシアのバリ島を根城にした麻薬の密売組織「バリ9」を仕切る豪州人ミューラン・スクマランとアンドリュー・チャンが05年、ヘロイン8キロを持っていたところを捕まった。
判決は当然死刑だった。


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インドネシアでは同じころにヘロイン密輸で捕まったオランダ人とブラジル人など6人がこの1月に処刑されたばかりだった。
2人の処刑が迫ったことを知ってオーストラリア政府はインドネシア政府に人道的な見地から死刑をやめるよう迫った。
しかしインドネシアの半分はアボリジニ系の親戚筋に当たる。
「お前らが人道を言えた義理か」

首相アボットが「アチェ津波被害にカネを出したではないか」と10年前の話を持ち出すと「その5年前の話は忘れたか」とインドネシア側は切り返した。
東ティモール沖に海底油田が確認され、白人混血児のシャナナ・グスマンが豪州と組んで独立させたのが99年。
インドネシアを悪者扱いしたその阿漕なペテンを忘れてはいない。

アボットの高飛車な言い分に怒った国民は豪州からの津波義捐金を突っ返すための募金を始め、一部は送り返されたという。


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困ったアボットはインドネシア人犯罪者と2人の死刑囚の交換を提案したものの、これも拒否された。
4月28日深夜、ジャワ中部の監獄島でチャンら豪州国籍の2人を含む8人が銃殺刑に処せられた。


インドネシアの頑なさを外電は非文明と非難したが、なぜ阿片をそこまで拒絶するかの解説はなかった。



’15.5.28 週刊新潮より