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210112 元慰安婦判決 23日確定  韓国地裁 別件の判決は延期

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’21/01/12 付北海道新聞朝刊6面の記事

慰安婦判決 23日確定  韓国地裁 別件の判決は延期

【ソウル共同】韓国のソウル中央地裁は11日、日本政府に元従軍慰安婦の女性への賠償を命じた判決が、日本政府が方針通り控訴しない場合、23日午前0時(日本時間同)に確定することを明らかにした。
地裁は判決文を日本政府が受け取ったとみなす「公示送達」の手続きを取り、8日の判決翌日の9日午前0時に効力が発生、2週間後に控訴期限を迎える。

 日本政府は、国家は外国の裁判権に服さないとされる国際法上の「主権免除」 の原則があるとして訴訟への関与を拒み、判決後控訴しないと表明した。




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 地裁は判決で、元慰安婦は「反人道的犯罪行為」の被害を受けており、主権免除原則は適用できず、日本政府には賠償義務があると判断した。
また1965年の日韓請求権協定と2015年の慰安婦問題を巡る日韓合意では、元慰安婦の賠償請求権は消滅していないとみなした。

 特に15年合意は「国と国の政治的な合意があったことを宣言したにすぎない」と指摘。
上訴審がなければ、こうした判断が判例として確定する。

 地裁判決は、故人を含む12人の女性に、請求通り一人当たり1億ウォン(約950万円)ずつ支払うよう命じた。
その後地裁は、日本政府に判決文を受け取るかどうかの意向確認をせずに公示送達手続きを取った。

 一方、ソウル中央地裁で審理中の、別の元慰安婦の女性ら20人が日本政府に損害賠償を求めた訴訟で、地裁は13日に予定していた判決を取りやめ、3月24日に弁論を再開することを決めた。
審理がさらに必要だと判断したとしている。




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文在寅大統領は訴訟に言及せず

【ソウル共同】韓国の文在寅大統領は11日、大統領府で「新年の辞」を発表した。
8日にソウル中央地裁が日本政府に対し旧日本軍の元従軍慰安婦の女性らへの賠償支払いを命じたことには言及しなかった。
日本との関係について「未来志向的な発展のためにも引き続き努力していく」との従来の立場を述べた。

 朝鮮半島情勢を巡っては「停滞している米朝対話と南北対話の大転換を成し遂げられるよう、最後の努力を尽くす」と強調。 北朝鮮とは「非対面の方式でも対話できる」とし、オンラインでの協議も呼び掛けた。

 新型コロナウィルス対応では、韓国の全国民が無料でワクチンの接種を受けられるようにすると表明した。
住宅価格が高騰している問題では十分な対応策を打ち出せていないことを陳謝した。



210614-210112付北海道新聞朝刊6面元慰安婦判決



210110 慰安婦判決 韓国に抗議  茂木外相「極めて遺憾」

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’21/01/10付北海道新聞朝刊2面の記事

慰安婦判決 韓国に抗議
 茂木外相「極めて遺憾」


 ブラジル訪問中の茂木敏充外相は8日午後(日本時間9日午前)、韓国の康京和外相と電話で会談し、元慰安婦訴訟で日本政府に賠償を命じたソウル中央地裁判決に強く抗議し、国際法違反を是正するための措置を早急に講じるよう求めた。
「極めて遺憾だ」と述べた。
康氏は地裁の判断を尊重する姿勢を示した上で「冷静な対応が必要だ」と述べ、過度な対応を自制するよう日本側に求めた。

 日本と韓国の外務省が9日、それぞれ発表した。
判決を無効にするよう求める日本政府と、司法判断には介入しないとする韓国政府の立場の違いが鮮明となった。




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 会談後、茂木氏はオンラインで記者会見し、今後の対応に関し「あらゆる選択肢を視野に入れ毅然として対応したい」と強調。
控訴については「日本政府が韓国の裁判権に服することは認められない」と否定した。
日韓関係を巡っては「急速に悪化する懸念が高まっている。今までの常識では考えられない判決が却下されるのが(改善の)スタートだ」との認識を示した。

 会談では「国際法上の主権免除の原則を否定し、原告の訴えを認める判決は、日本政府として断じて受け入れられない」と指摘した。
1965年の日韓請求権協定と2015年の日韓合意に触れ「慰安婦問題は日韓両政府の間で『最終的かつ不可逆的な解決』が確認されている」と訴えた。

 韓国外務省の報道官は8日に論評を発表し「裁判所の判断を尊重し、慰安婦被害者の名誉と尊厳を回復するために行える努力を全うしていく」としている。



210613-210110付北海道新聞朝刊2面慰安婦判決韓国に抗議


210109 慰安婦訴訟 日本に賠償命令  日韓関係 危機に直面  資産差し押さえなら「致命傷」

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’21/01/09付北海道新聞朝刊3面の記事

慰安婦訴訟 日本に賠償命令
 日韓関係 危機に直面
  資産差し押さえなら「致命傷」


 歴史問題を巡る韓国の司法判断が、再び日韓関係を激しく揺さぶった。
韓国最高裁が日本企業に賠償を命じた2018年の元徴用工訴訟に続き、ソウル中央地裁が8日に下した日本政府に元慰安婦らへの賠償を命じた判決。
原告側は日本政府が賠償しなければ、資産の差し押さえも辞さない構えを見せており、日韓両政府は深刻な紛争に陥りかねない状況に直面している。



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官房長官国際法違反」
「文明国家だと自負する日本が、反人道的で反文明的なことを解決していない」。
原告代理人は8日の判決後、記者団に慰安婦問題を巡る日本政府の対応を非難した。 原告側は日本政府が賠償に応じなければ、韓国内の日本政府の資産を差し押さえ、売却して賠償金に充てる方針とみられる。

 ウィーン条約は外国公館への不可侵を定めており、日本大使館総領事館は差し押さえの対象外となる。
仮に差し押さえ対象になり得る資産を見つけ、管轄する地裁に差し押さえ命令を出すよう申請しても、別の裁判官が日本の国家主権の侵害に当たると判断すれば認めない可能性もある。

 ただ韓国外交筋は「日本大使館の付属施設など差し押さえ可能な資産は確実にある」と指摘。
徴用工訴訟を巡っても、日韓両政府は問題解決に向けた妥協点を見いだせておらず、被告の日本企業の資産売却手続きは進んでいる。
慰安婦問題で日本政府に対する強制執行が現実となれば「韓日関係にとって致命傷になる」とは必至だ。



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文政権も想定外
 夏の東京五輪は首脳間外交の舞台となるとみて、日本との関係改善を模索していた文在寅政権にとっても判決は「想定外で大きな誤算」(文氏周辺)だった。

 韓国外務省の報道官は8日の論評で司法判断を尊重する姿勢を示す一方、「韓日両国の建設的かつ未来志向的な協力が続けられるよう努力を傾ける」と主張した。
ただ、文政権は慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」をうたった15年の日韓合意について「重大な欠陥があった」として一方的に空文化。
徴用工問題では司法判断を重視する姿勢を貫いてきた経緯もあり、慰安婦問題で日本側に歩み寄れば「自己矛盾」との批判は免れない。

 世論に強い影響力を持ち、13日に同種訴訟の判決を控える元慰安婦の李容洙さん(92)も判決を「この知らせだけを待っていた」と歓迎した。
韓国は日本植民地下の被害者の権利や尊厳の回復に重きを置く社会であるだけに「文政権が打てる対策はほぼ無い」(韓国外交筋)のが現実だ。



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対韓圧力を強化
 日本政府は対韓圧力を強める。
加藤勝信官房長官は8日の記者会見で判決を「国際法違反」と断じ、韓国に「適切な措置を講ずることを強く求めていく」と強調した。
国家は外国の裁判権に服さないという国際法上の「主権免除」の原則が慰安婦問題には適用されないという韓国司法の判断に対し、日本外務省幹部も「国際法上ありえない」と不快感を隠さない。

 同種の裁判では、イタリア最高裁が04年、第二次大戦中にドイツで強制労働をさせられたイタリア人の訴えを認め「国際的犯罪は主権免除の例外」と判断、ドイツ政府に賠償を命じた例がある。
しかし、ドイツ政府は国際司法裁判所(ICJ)に提訴し、12年に勝訴した。
日本政府も周辺国や国際機関を通じて韓国側への働きかけを進める方針で、ICJの提訴も視野に入れているとみられる。

日韓合意などを根拠に、韓国の司法判断を一顧だにしない日本政府の姿勢は、韓国世論から「最終解決という言葉を免罪符のように振りかざしている」との不信も買っている。

 日韓関係が専門の李元徳・国民大学校教授は「両政府が冷静に自制して問題に対処しなければならない」と指摘。
「判決は国家の主権よりも人権が上位の概念だと判断したが、裁判所の判断と外交を分離し、バランスを取るべきだ」と述べ、韓国政府は司法判断を重視するだけではなく、日本政府と共に主体的に解決に乗り出すべきだとの認識を示した。
(ソウル 上家敬史、東京報道 広田孝明)



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主権免除の原則
 ある国家が他国の裁判権に服さないとする国際法上の原則。
独立した国家同士が互いの平等を認め主権を尊重するのが目的とされる。
かつては国家のほぼ全ての行為に対して裁判権を免除する「絶対免除主義」が主流だった。
しかし、国家と取引する民間企業の活動を保護する必要性が高まり、国家と民間企業の経済的、商業的活動などには免除を適用しないとする「制限免除主義」が各国で有力となっている。



210611-210109付北海道新聞朝刊3面の記事 日韓関係危機に直面1
210611-210109付北海道新聞朝刊3面の記事 日韓関係危機に直面2