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141117 慰安婦問題を考える 日韓条約 混迷の原点

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’14/11/17の北海道新聞朝刊 13面

慰安婦問題を考える

日韓条約 混迷の原点

従軍慰安婦問題が解決しない理由をたどると、1965年の日韓基本条約締結に行き着く。
慰安婦への対応など、戦後補償問題を十分に協議しないまま、日韓両政府が「両国の請求権問題は完全かつ最終的に解決された」との合意を急いだことが、問題の混迷を招いたと言えそうだ。


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条約と同時に結んだ請求権協定に、この合意を盛り込み、日本は賠償ではなく経済協力として、韓国に5億ドルを供与した。
当時の韓国は、朴正煕パクチョンヒ大統領が軍事独裁政権を敷き、経済成長を優先。
慰安婦や韓国人被爆者などの補償問題は顧みられなかった。
日本政府の関係者は「故意ではなく、双方に認識が薄かった」と指摘する。


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アジア情勢はベトナム戦争の本格化で、冷戦対立の真っただ中だった。
米国は”自国の陣営”である日韓の国交正常化を急がせており、両国が交渉を丁寧に進める環境にはなかった点も背景になっている。


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転機は87年の韓国の民主化で訪れる。
独裁政権で水面下にあった慰安婦問題が、人権意識の高まりとともに表面化。
91年には、元慰安婦が韓国で名乗り出て、後に日本政府に補償を求めて提訴した。
だが、日本政府は「請求権協定で問題は解決済み」と繰り返し、韓国政府も、日本に国家賠償は求めなかった。


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韓国で対日批判が高まるなか、92年1月、宮沢喜一首相が訪韓。 韓国政府は、慰安婦問題で首脳会談が決裂するのを避けるため、日本側に配慮を求めた。
宮沢首相は盧泰愚ノテウ大統領との会談で、「衷心よりおわびと反省の気持ちを表明したい」と述べた。


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日本政府は「単に口頭の謝罪だけでは韓国世論がおさまらない可能性」があると判断。
その後も調査、検討を重ね、92年7月に加藤紘一官房長官慰安所の設置、監督、衛生管理などに政府の関与があったと調査結果を発表。
93年8月には、河野洋平官房長官が元慰安婦に対する旧日本軍の関与や一定の強制性を認め、おわびと反省を表した「河野談話」を明らかにした。


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95年には、「償い金」を支給するアジア女性基金が設立された。
「補償問題は法的に解決済み」との政府の立場を踏まえ、民間からの募金を原資にした。
韓国政府は当初、日本側の取り組みを評価した。
しかし、メディアや市民団体「韓国挺身ていしん隊問題対策協議会」が「日本政府は責任を回避している」と強く反発。


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世論に押された韓国政府も、基金の中止を求める方針に転換した。
2005年、盧武鉉ノムヒョン政権は「慰安婦問題は請求権協定の適用対象外」と主張し始めた。
11年8月には、韓国の憲法裁判所が、元慰安婦の補償をめぐって日本と交渉しないのは違憲、と判断し、韓国が慰安婦問題を対日外交の最優先課題にすえる構図が出来た。


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これ以降、12年の李明博イミョンバク大統領の島根県竹島上陸、13年の安倍晋三首相の靖国神社参拝、今年6月の日本政府による河野談話の検証、11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)での首脳会談見送りと続く。
朴槿恵パククネ政権は来年末ごろに、「慰安婦白書」を発刊する予定という。


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北海道新聞は1965年に二国間で締結された条約内容に問題があるとする立場