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201219 ミサイル防衛 敵基地攻撃認められぬ

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'20/12/19付北海道新聞朝刊7面の社説

ミサイル防衛 敵基地攻撃認められぬ

政府がきのう、ミサイル防衛に関する新方針を閣議決定した。

歴代政権が否定してきた「敵基地攻撃能力の保有」については直接触れない一方で、敵の射程圏外から攻撃できるスタンド・オフ・ミサイルの開発を盛り込んだ。

敵基地攻撃能力を巡っては、安倍晋三前首相が退陣間際の談話で保有に向けた議論を促していた。

保有憲法に基づく専守防衛の原則に反し、認められない。

今回は保有を巡る判断を先送りする形を取りながらも、敵基地攻撃に転用可能な長射程のミサイル開発方針を明示し、保有への一歩をさらに踏み出したと言える。

「抑止力の強化」に名を借り、なし崩し的に専守防衛を形骸化させることは許されない。




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敵基地攻撃には公明党が否定的で、自民党内でも異論がある。

政府は、憲法の趣旨に反する政策を撤回するべきだ。

専守防衛から逸脱しかねない政策としては、安倍前政権が2018年に策定した防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画に、長距離巡航ミサイルの配備や、事実上の空母保有などが盛り込まれてきた。

これまでは外国製の装備が主体だったが、新方針には、国産の地対艦誘導弾の飛距離を大幅に延ばし、スタンド・オフ・ミサイルとして開発することが明記された。

菅義偉政権が前政権の防衛政策を検証することもなく、逆に加速させているのは看過できない。

さらに問題なのは、山口、秋田両県への配備を断念した地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」計画の代替策だ。 イージス艦2隻を新造し、海上自衛隊に運用を担わせることを明記した。




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導入コストだけで5千億円以上かかるとされ、30年間の運用経費を含めると総経費は7千億円以上になるとの試算もある。

地上イージスのレーダーを転用する上、洋上での維持管理費は割高なため、経費がさらに膨らむ可能性も否定できない。

断念した地上イージスは当初、経費を4千億円超と説明し、改修に伴う経費の膨張を理由に計画を撤回した。
焼け太りのようなイージス艦の新造は筋が通るまい。

地上イージス導入は、トランプ米政権に巨額の貿易赤字解消を迫られる中で進められ、運用次第では憲法の制約を超えた敵基地攻撃能力を有するとの指摘があった。

地上配備は断念したが、その能力を艦上に移すのが新方針だ。
米国の政権交代を機に問題点を洗い出し、白紙で見直す必要があろう。



210318-201219 7面社説ミサイル防衛