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190803 日本が輸出優遇除外 韓国も対抗措置へ  「報復」連鎖 防衛協力に影

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'19/08/03付の北海道新聞朝刊2面の記事

日本が輸出優遇除外 韓国も対抗措置へ
「報復」連鎖 防衛協力に影


日本政府が2日の閣議で、輸出手続きを優遇する「ホワイト国」から韓国を除外することを決め元徴用工訴訟に端を発した日韓の対立はさらに深刻な局面に入った。

米国は日米韓外相会談で「仲介」を試みたが、日韓の主張は平行線をたどり不発に。

韓国は輸出規制強化の対抗措置として軍事情報に関する日本との協力見直しを検討する構えを見せており、「国交正常化後最悪」とされる日韓関係は北東アジアの安全保障環境にも影を落としつつある。




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北朝鮮戦略亀裂も

「日韓関係に影響を与えることは意図していない。ましてや対抗措置ではない」。

菅義偉官房長官は2日の記者会見でホワイト国から韓国を除外することの正当性を重ねて強調した。

ホワイト国除外を巡っては、韓国側が「韓国経済に打撃を与えるための元徴用工問題の報復措置」とみなし中止を要求。

日本外務省も「除外を決定すれば、仲介に意欲を示す米国の顔に泥を塗りかねない」と首相官邸に懸念を伝えていた。

にもかかわらず日本政府が日米韓外相会談の直前に閣議決定に踏み切ったのは、元徴用工訴訟問題の解決に消極的な韓国政府に対応を促すには「一切妥協する必要はない」(官邸筋)と判断したからだ。

仮に元徴用工らへの賠償を命じられた日本企業に資産売却などの実害が生じれば、韓国以外の国との戦後補償にも影響が及びかねないとみる。

日本は韓国製品に対する関税引き上げなどさらなる「圧力」も視野に入れており、日本外交筋は「菅氏らが『報復ではない』と発信しているのは、本当の報復措置はこれからだという韓国側へのメッセージでもある」と指摘する。




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韓国側も対日批判に拍車を掛けた。

文在寅大統領は2日の緊急閣議で「盗人たけだけしい」との強い言葉を使い「今後広がる事態の責任は全面的に日本政府にあると警告。

趙世暎外務第一次官は日本の長嶺安政駐韓大使を韓国外務省に呼んで抗議し「韓国国民は日本をこれ以上、友好国と考えることはできない」と批判した。

韓国大統領府関係者は8月下旬に更新時期を迎える日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)について、日本が韓国を信頼できないと主張する中で「敏感な軍事情報の共有をできるのか」と述べ、破棄も含めた「すべてのオプション」を検討する考えを示した。

韓国内では7月末、与党のシンクタンクが日本の対韓輸出規制について「(来年4月の韓国の)総選挙への影響は肯定的」と分析する報告書を作成していたことが判明するなど、日韓の摩擦が文政権に有利に働くとの見方も出ている。

文氏が安保分野も例外としない強気の対日政策で求心力維持を狙う可能性は高い。




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韓国政府は2日、日本への対抗措置の一環として「観光、食品、廃棄物なとの分野で安全措置を強化する」と発表した。

韓国は東京電力福島第一原発事故を理由に福島など8県産の水産物輸入を禁止しており、そうした措置の拡大を検討している可能性がある。

米国は同盟国同士が激しく敵対する構図に警戒を強める。

北朝鮮政策で歩調を合わせてきた日米韓の連携にほころびが生じれば北東アジアの安全保障戦略に支障が出るのは避けられないためだ。

だがポンペオ米国務長官が2日よるの日米韓外相会談で対話を促したものの、それを仲介と取るかどうかを巡ってすら日韓の認識はかみ合わなかった。




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北朝鮮は2日、こうした懸念を見透かすように再び短距離の飛翔体を発射。

GSOMIAが破棄されれば、北朝鮮の核・ミサイルをめぐる日韓の情報共有が滞りかねないだけに米外交筋は憂慮する。

「日韓の報復の連鎖は、北朝鮮を理するだけだ」

(上家敬史、ソウル 幸坂浩、バンコク 森奈津子



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