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201125 日中外相 往来再開で合意 友好演出、尖閣は譲らず

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'20/11/25付北海道新聞朝刊5面の記事

日中外相 往来再開で合意
友好演出、尖閣は譲らず


茂木敏充外相と中国の王毅国務委員兼外相との会談は、新型コロナウィルス対策などでは協力強化をアピールする一方、沖縄県尖閣諸島周辺をはじめとする中国の海洋進出を巡っては平行線をたどった。
新たな日中関係を定義する「第五の政治文書」の実現をなお模索する日本と、アジア太平洋地域の主導権確保に動く中国。
米中間の緊張も続く中、日本政府はバランス外交を強いられている。




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「日中両国の安定した関係が地域、国際社会に極めて重要であることを確認した」。
茂木氏は会談後の共同記者発表で新型コロナを巡るビジネス関係者の往来再開など成果を訴えた。

だが、尖閣周辺での中国公船問題については、両外相が互いの立場を強く主張。
王氏は会見で「日本の漁船が釣魚島(尖閣諸島の中国名)の水域に入っている。われわれは自国の主権を守る」などと強調した。

中国は東・南シナ海を中心に海洋での影響力を拡大しつつある。
中国政府は海上警備を担う「中国海警局(海警)」の権限を強める「海警法」の制定を推進。
国家主権や管轄権が外国組織などに侵害されたと判断した場合、停船命令に従わなければ武器を使えるとする内容で、日本漁船が危害を加えられる恐れがある。

管轄する海域や島で外国が造った建築物の強制撤去を認める規定もあり、中国側が同法を根拠に尖閣に上陸する可能性も排除できない。
12月以降に可決される見通しで、日中間の新たな火種となる可能性は高い。




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中国は、日本とオーストラリアが友好関係を深める現状にも神経をとがらせる。
対中攻勢を強める米国と近い両国が防衛協力を進める「円滑化協定」締結で大枠合意したことについて、中国外務省は「中国の主権と利益を損なう行動をやめるべきだ」と牽制した。

ただ日中政府には、対立しつつも友好ムードを打ち出したい思惑がある。
日本側は、政権の政治的成果になる「政治文書」締結を視野に入れる。
党内保守派への配慮から会談では触れなかったが、習近平国家主席国賓来日の実現を目指すのはそのためだ。
一方の中国側は、バイデン次期政権も対立が続くとみられる米中関係を懸念。
会談では「米国についてかなり時間をとった」(外務省幹部)といい、切り崩しを図りたい習指導部は日本を含めた周辺国との連携強化を急ぐ。




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中国側のこうした姿勢は覇権主義的な動きの延長線上だ。
「地域的な包括的経済連携(RCEP)」署名や、会談でも話題になった環太平洋連携協定(TPP)への参加を習氏が「積極的に考える」としたのも、アジア太平洋諸国の対米依存度の引き下げが念頭にある。
砂上に立つ「友好」に日本が固執すれば安全保障や経済上の立場を危うくしかねない。

(東京報道 広田孝明、北京 十亀敬介)




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