201226 安倍氏の説明 議員辞職してけじめを
'20/12/26付北海道新聞朝刊7面社説
安倍氏の説明 議員辞職してけじめを
安倍晋三前首相はきのう、自身の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用補填問題を巡り、衆参両院の議員運営委員会に出席した。
補填を否定した首相在任中の国会答弁について「事実に反するものがあった」として陳謝した。
時の首相が国会で100回以上も事実と異なる答弁を行った責任は極めて重い。
補填は「私が知らない中で行われた」などと、秘書に責任転嫁するかのような発言を繰り返した。
国会議員には秘書を監督する責任がある。もはや議員辞職してけじめをつけるしかない。
この問題で、東京地検特捜部は政治資金規正法違反(不記載)の罪で公設第一秘書を略式起訴し、安倍氏本人は不起訴とした。
安倍氏は昨秋の疑惑発覚後、国会で「全く違法性はない」と繰り返し「私がここで話しているのがまさに真実」とまで言い切っていた。その答弁が根底から崩れた。
ところが安倍氏は野党の議員辞職要求を拒否し、「失われた信頼を取り戻すために、今後とも研鑽を重ね、期待に応えられるよう全力を尽くす」と述べた。
補填についても、政治資金収支報告書の不記載についても「知らなかった」では済まされない。
首相在任中に起きた自身の政治資金を巡る事件や国会での誤った答弁の責任の取り方として、到底納得できるものではない。
見過ごせないのは、費用の穴埋め自体は問題はないとの認識を示したことだ。
検察の処分対象になったのは、補填に絡む収支を政治資金収支報告書に記載しなかったことだとはいえ、多額の補填は利益供与にあたるとの指摘が根強くある。
桜を見る会は安倍氏の支持者のために私物化したと批判され、夕食会も一体とみられている。費用を穴埋めした動機を解明しなければならない。
「ない」と断言していた明細書に関しては「ホテルが公開前提では出せないと言っている。ないとは言っていない」と釈明した。
国会で再三追求されながら、明細書の確認などを怠った事実に変わりはない。
計2時間ほどの質疑では不十分だ。虚偽の証言をすれば罰則が科せられる証人喚問が欠かせない。
官房長官時代に安倍氏の説明をなぞる答弁を重ねた菅義偉首相も責任は免れない。安倍氏の証人喚問の実現に向け、自民党総裁として指導力発揮が求められている。