Cameraと散歩

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230423 北海道似湾編 似湾沢 9の1

IMGR075-20

履 歴 稿    紫 影子  

北海道似湾編   似湾沢 9の1

 「オイ、義章さん、今日ヤマベを釣りに行かないか。川向の似湾沢だが、天気が良いから屹度面白いぞ。」と突然保君が誘いに来た。

 私はヤマベと言う魚がどんな魚か、また保君の言う面白いぞと言うことが、どんなことを意味するものかと言うことは判らなかったのだが、毎日を愉快に遊んで居る、仲好の保君が言うことだから屹度面白いのだろうと思ったので、「ウン、連れて行ってくれ。」と即座にその誘いに応じたのであった。

 「お母さん、保君と似湾沢と言う所へ、ヤマベと言う魚を釣りに行くから。」と私は、母にお昼の弁当を作ってくれるようにと頼んだ。

 すると、それを傍で聞いて居た兄が、「お母さん、弁当私の分も頼みます。義章、俺も一緒に連れて行け。俺達はヤマベと言う魚を見たことないもんなあ。」と言うのを、母は心良く引き受けて、ご飯の上に梅干を乗せたニユムの弁当箱を二個、一枚の風呂敷に包んだ。




IMGR075-21

 「オイ、支度出来たか、池田さんの浩治さんも一緒に行くとよ」と風呂敷に包んだ弁当を腰に巻た保君が、テングスや釣針を装備した短い釣竿を、二本担いで誘いに来た。

 「保君、俺の兄さんも行きたいんだとよ、だから一緒に連れて行ってくれよ。」と、兄の希望を私が伝えると、「いいよ、人数の多いほうが却って面白いよ。」と言って保君は、担いで来た二本の釣竿を、「これ一寸持って居てくれ。」と、私に持たして、くるっと廻れ右をして自分の家へ走って行った。

 それから五分程すると、私に持たした二本の竿と同じように、テングス其の他を装備した新品の釣竿を1本持って、駈け戻って来た保君が、「義潔さんも、義章さんも、釣針のとこ、俺ぼろ布で結んで来たのだけど、沢へ這入ったら木の枝の下を何回となく潜るんだから気を付けなよ、うっかり竿の先のテングスを枝に引っ掛けると、俺も何回かやったことなんだけどよ、釣竿を持っている手の指に釣針を刺すぞ。」と、忠告をしてくれた。

 「弁当は、義章お前が持てよ。」と兄が言ったが、私は母が一枚の風呂敷に二個の弁当箱を包んだ時から、既に覚悟をして居た。

 「気を付けるんだよ。」と門柱の所まで送って出た母の声をあとに、私達三人は道路を右に曲って学校の坂を降った。