'19/12/30付北海道新聞朝刊2面の記事から
中国指導部が尖閣侵入指示
領有権主張 強化図る
<解説>沖縄県・尖閣諸島領海への中国公船侵入は、10年以上前から中国が実効支配の打破を目的に周到に計画した政策だったことが判明した。
中国は、日本が「領有権問題は存在しない」との立場を続けていることに苛立っており、公船侵入の既成事実を積み重ねることで日本に争いの存在を認めさせる狙いだ。
日中関係は改善してきたが尖閣周辺の緊張状態に変化はない。
関係再悪化の懸念は常にあり、衝突防止のため恒久的解決へ向けた対策が急務だ。
中国公船が尖閣領海に初侵入した2008年12月8日は、福岡県での日中韓首脳会談開催の直前だった。
日本側は「このタイミングで中国が故意に波風を立てるはずはない」(外務省筋)と分析。
「指導部の意向を無視して現場が暴走した」(同)との見方が強かった実態は“確信犯”だった。
当時は胡錦濤前国家主席の時代で、公船侵入は前指導部から習近平現指導部に至る一貫した政策だったことになる。
中国側の動機は国際法上での領有権主張の強化だ。
ただ国際法廷で争うことになれば、紛争発生の「決定的期日」以降の行動は証拠として採用されない。
中国は1,970年代に領有権主張を開始しておりこの頃が「期日」認定されるとみられ、中国の公船侵入は全て効力を持たない。
だが中国は力による現状変更も見据えているようだ。
公船を増強している上、2016年8月には数百隻の中国漁船が尖閣周辺に押し寄せ、漁民の武装も疑われた。
防衛省は石垣島にミサイル部隊も配備する計画だが、海上保安庁を含めこうした事態への対応は難しいのが現状だ。
自制の説得困難
益尾知佐子九州大準教授(中国の対外政策)の話
現在の国際法では、他国の実効支配を打破するために新たな行動を取っても、自国の領有権主張の強化にはつながらない。
ただし中国は、国際法は力のある西側列強が世界的な優越性を長期化するために作ったものと認識し、逆に自国が実力を付ければ変更可能と考えている。
中国国内では共産党が法律を恣意的に運用しているため、国際法も同様に理解されている。
海洋の法的秩序の根幹をなす国連海洋法条約は、米国も未批准で、諸国の理解が一致しないグレーゾーンが残る。
中国は海洋法を「まだ変え得る法体系」と見なしているため、公船侵入を自制するよう説得するのは難しい。
191230 中国指導部が尖閣侵入指示 領有権主張 強化図る