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’20/12/23付北海道新聞朝刊7面の社説 青天井の防衛費 専守に徹し精査不断に

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’20/12/23付北海道新聞朝刊7面の社説

青天井の防衛費 専守に徹し精査不断に

 政府の来年度予算案で、防衛費はまたも青天井で膨張した。

 前年度当初比0.5%増の5兆3422億円となり、第二次安倍政権以降、9年連続の増額だ。
過去最高も7年連続で更新した。

 宇宙、サイバーといった新たな領域に対処する必要性などを挙げている。
だが新型コロナ禍で財政は逼迫しており、増額ありきの編成を続ければさらに悪化する。

 加えて近年問題なのは、当初予算ではなく、補正時に積み増す編成を多用している ことだ。

 来年度予算に先立ち、先週決めた本年度第三次補正では、約4千億円を装備品購入などに充てた。
防衛費の実態を見えづらくする編成を常態化させてはならない。




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 菅義偉首相は「前例踏襲の打破」を掲げている。
ならば防衛費を聖域のようにせず、費用対効果を踏まえて不断に精査するべきだ。

 専守防衛から逸脱しかねない前政権からの政策を、さらに加速させていることも看過できない。

 その一つが、敵基地攻撃に転用可能な長射程ミサイルの開発だ。
概算要求では27億円計上したが、335億円に大幅に積み増した。

 歴代政権が否定してきた敵基地攻撃能力の保有につながる虞のある装備品だ。
なし崩し的に開発を進める事は許されない。

 今後経費が膨張しかねない費目が多いことも気にかかる。

 駐留米軍の経費は米側と交渉中のため、本年度と同水準としたが、米側の増額圧力はなお強い。

 政府は導入を断念した地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の代替として、イージス艦2隻の新造を決め、来年度は調査費17億円を計上した。

 しかし最終的な経費は7千億円以上に膨らむと見込まれている。




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 そもそも地上イージスは、24時間365日運用させるとともに、イージス艦を担う海上自衛隊の負担軽減を訴えて推進してきた。

 先祖返りするかのようなイージス艦新造は過去の説明と矛盾し、拙速な代替策と言うほかない。

 防衛費膨張の一因には、トランプ政権に貿易赤字削減を迫られ、高額の米国製装備品を購入し続けていることがある。

 米側の「言い値」に近い価格で購入する対外有償軍事援助(FMS)は来年度、約2500億円に上る。
複数年度にわたる取引も多く、予算の硬直化を招いている。

 対米追従の姿勢が 予算編成をゆがめていないか。
専守防衛に徹しつつ、米国との取引の在り方についての検証も欠かせまい。



210521-201223 7面社説青天井の防衛費