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210616 与党 採決強行 「重要土地」疑問、懸念なお

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’21/06/16付北海道新聞朝刊2面の記事

与党 採決強行 「重要土地」疑問、懸念なお

 政府・与党は15日、安全保障上重要とみなす施設周辺の土地利用を規制する法案の成立へ突き進んだ
与党は慎重審議を求めた立憲民主党などの要求を振り切り参院内閣委員会で採決を強行した
衆参両院の委員会で計26時間しか行われていない審議では、規制や調査、罰則の対象など法案の根本に関わる多くの基準が明示されず、政府が答弁を避ける場面も続出。
疑問や懸念ばかりが浮かび上がった




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審議不十分 答弁避ける

 「審議は不十分、生煮えのままだ。法案の成立に断固反対する」。
15日夜の内閣委採決。
立憲の木戸口英司氏は反対討論で訴えた。
だが森屋宏委員長(自民党)は採決を宣言し、可決された。

事前合意を翻す

 同法案は5月11日に衆院で審議入り。
曖昧さは議論が進むほど膨らんだ。
政府は規制対象について防衛関連施設だけで「500カ所超」と説明。
具体的には「防衛戦略の一端を示すことになる」と明かさないままだ。
法案提出前の与党協議では、土地売買時の事前届け出を義務付ける「特別注視区域」の対象から市街地を原則除外することで合意したが、国会審議で小此木八郎領土問題担当相は「政府として約束したという話はない」と打ち消した。

 対象施設だけでなく、周辺住民への具体的な調査内容や罰則対象となる妨害行為の内容についても、政府は「適切に判断する」「法成立後に基本方針に例示する」などと答えるのみ。
さらに「例示する以外の行為が該当しないと断定できない」(内閣官房担当者)と広い裁量の余地を残した。




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情報収集拡大も

 政府が収集できる情報は氏名や住所のほか「その他政令で定めるもの」とされる。
政令で定める項目について、政府は国籍や生年月日、連絡先を挙げたが「国籍などが分かれば妨害行為のリスクが分かるのか」との野党の追求に対し、内閣府審議官は「さまざまな調査手法を組み合わせて判断する」と答弁。
ここでも拡大の可能性を示唆した。

 野党は「私権制限の恐れ」などから慎重審議を求めてきた。
与党は参院審議で、野党が要求する外交防衛委員会との連合審査や参考人質疑に応じ、「衆院の8割」が目安とされる審議時間も「衆院の12時間を上回る時間を積んだ」(参院自民幹部」と強調。
政府関係者も「すでに十分な審議時間を取っている。採決は当然だ」と言い切った。

 与党が成立を急いだ背景には、長く法整備を求めてきた党内保守層への配慮がある。
今国会では、野党から批判を受けた入管難民法改正案などの成立を断念。
「これ以上、野党に譲ることは避けたい」との思惑に加え、強行しても「世論の関心は高くなく、批判は少ない」(自民党幹部)との甘い見通しも透けた。 (玉邑哲也、袖山香織)



210929-210616 2面土地利用規制法案