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191123 米圧力で韓国決断 軍事協定 失効回避 日本、水面下で「譲歩」

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'19/11/23付北海道新聞朝刊3面の記事

米圧力で韓国決断

軍事協定 失効回避
日本、水面下で「譲歩」


韓国政府は22日、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)の失効期限となる23日午前0時のわずか6時間前に、破棄決定の効力停止を発表した。

協定破棄に強い懸念を示す米国から露骨な圧力を受け、日米韓3カ国による安全保障上の連携体制が崩れる危機をひとまず回避した形だ。

ただ、日韓が元徴用工問題や輸出規制問題で対立する構図は変わっておらず、国交正常化後最悪とされる日韓関係の改善につながる保証はない。

(ソウル 幸坂浩、ワシントン 平畑功一、東京報道 上家敬史)





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徴用工」解決見通せず

「日韓間の外交チャンネルを通じ、実質的な協議を進めてきた。日本の輸出規制措置と関連した懸案解決に寄与する方向で両国間の対話を再開する」。

韓国大統領府関係者は22日夜、記者団に日韓問題解決への強い意欲を示した。

日本外交筋によると、日韓両政府は22日も外交当局間に加え、北村滋国家安全保障局長と来日した韓国の安保当局幹部らが東京都内で破棄回避に向けた交渉を断続的に実施。

韓国政府が「振り上げた拳を下ろす理由」(韓国外交筋)を探る中、日本がこれまで消極的だった輸出規制強化を巡る協議に応じる姿勢を示し、事態は進展したとされる




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これを受け、韓国政府は22日午後6時、GSOMIA破棄の効力停止を表明。

日本経済産業省もほぼ同時に2016年夏以来となる輸出規制を巡る局長級対話を再開すると発表した。

安倍晋三首相周辺は「協定と対韓輸出管理は別問題との立場は全く変えていない」と強調するが、韓国は日本側の譲歩によって失効回避の「大義名分」を得られたと判断。

双方の解釈が食い違う中、康京和外相は同日夜、記者団に「規制撤回に向けた土台ができた」と交渉成果を強調してみせた。




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国防長官訪韓

2017年5月の韓国大統領選公約でGSOMIAについて「効用を検討後、延長の可否を決定する」と見直しを示唆していた文在寅大統領。

韓国内の世論調査でも協定破棄への支持が過半数を占める中で方針転換に傾いた背景に、米政府の強い「圧力」があった事は間違いない。

米政府は今月に入りエスパー米国防長官を訪韓させ、協定更新を韓国政府に要求。

21日にもポンペオ国務長官が康外相と電話で協議した。

米政府はこの間、長期的な対中戦略もにらみ、韓国にインド太平洋戦略に積極的に参加するよう促し、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の製品の使用禁止も求めたとされる

いずれも北朝鮮だけでなく、中国にも融和姿勢をとる文政権に「踏み絵」を迫る内容だった。




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さらに、米政府は韓国に対し、在韓米軍駐留費について今年の5倍の金額を要求している。

仮に協定失効で米韓関係が悪化すれば、在韓米軍縮小論にも言及してきたトランプ米大統領がさらに要求を強めかねないー。

そんな危機感も文政権の決断を後押ししたとみられる

日本政府高官は「韓国が折れたのが実態」と勝ち誇ったように語った。




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暫定措置協調

韓国政府が協定失効を回避したことを受け、日本側からは「関係改善の弾みになればいい」(閣僚経験者)と期待の声が上がった。

ただ、韓国側にとって今回の対応は「輸出規制問題を巡る協議が進行される間の暫定的な措置」(大統領府関係者)。

日本が輸出規制強化の撤回に応じなければ協定破棄に踏み切ることも辞さない姿勢を示し、日本に揺さぶりを掛けている。




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一方、茂木敏充外相は22日、名古屋市内で記者団に「根本にある問題は旧朝鮮半島出身者労働者問題であり、韓国に1日も早く国際法違反の状態を是正するよう求める」と強調。

韓国側が元徴用工訴訟問題の解決策を講じない限り、輸出規制で安易な譲歩はしない意向をにじませた。

文政権が元徴用工問題で譲る気配は見えず、年明けにも韓国最高裁から賠償命令を受けた日本企業の資産が売却され、日本政府が対抗措置に出る可能性もある。

日本政府関係者は今回の韓国の対応に「急場しのぎにすぎない」と指摘した。




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「制服」関係復活を

海将の伊藤俊幸金沢工業大学虎ノ門大学院教授の話


日韓のGSOMIAが破棄されても、北朝鮮弾道ミサイル発射への対応で韓国側から得られる情報は限定的なため、日本の安全保障に大きな影響は無い。

一方で日本から多くの情報を得ている韓国にとって破棄は死活問題。

韓国国民ひいては在韓米軍を危険にさらすため米国が強く反対してきた。

過去は日韓関係が悪化しても、自衛隊と韓国軍の制服同士の関係は良好だった。

だが、昨年から海自哨戒機への火器管制レーダー照射問題などで全く疎遠になった。

協定破棄をやめたことを関係復活のきっかけにしなければいけない。




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韓国世論は反発も

対日外交に長年携わった韓国の元外交官、劉義相・東アジア平和繁栄研究所長の話


GSOMIAは、韓日米の安全保障上の連携を象徴する仕組みだ。

当面維持を決めた韓国政府の判断を歓迎したい。

しかし韓国内では「日米の圧力に屈服した」という印象は免れられず、政権への批判や反発が予想される。

ただ失効した場合も対米関係に亀裂が生じる虞があった。

外交安保上の実利を優先したまっとうな判断をしたと評価すべきだ。

今後、日韓対立の根幹にある韓国人元徴用工訴訟を巡って、双方の立場の違いを埋める困難な作業が続く。

本当の正念場はこれからだ。(ソウル共同)



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