200715 南シナ海でも米中対立 米長官「権益主張は違法」
'20/07/15付北海道新聞朝刊9面の記事から
南シナ海でも米中対立
米長官「権益主張は違法」
【ワシントン、北京共同】ポンペオ米国務長官は13日、「中国による南シナ海ほぼ全域における海洋資源権益の主張は完全に違法だ」と非難する声明を発表した。
米メディアによると、中国の主権主張を公式に否定するのは極めて異例。
中国「国際法に合致」
中国外務省は14日、中国の主権と海洋権益は「国際法に合致している」と猛反発した。
スティルウェル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は同日の講演で、南シナ海を巡り対中制裁を科す可能性を排除しない考えを表明。
南シナ海情勢の緊張が高まるのは必至で、新型コロナウイルスや香港問題で激化していた米中対立は一層深まった。
ポンペイ氏は「中国が南シナ海を海洋帝国の一部として扱うことを世界は許さない」と批判した。
同氏は、南シナ海を巡る中国の主権主張を退けた2016年の仲裁裁判所の判断から12日で4年を迎えたのに合わせて声明を発表。
裁判所の判断に法的拘束力があるとし、中国に遵守を求めた。
フィリピンの排他的経済水域(EEZ)内にあり、中国が実効支配するスカボロー礁などを巡る中国の海洋権益の合法性を否定。
南沙(英語名スプラトリー)諸島では、中国が軍事拠点化を進めるミスチーフ礁などの主権はフィリピンにあると断言し、ベトナム沖のバンガード堆周辺などの海洋権益、マレーシア沖のジェームズ礁の領有権なども認めないとした。
米国はこれまで、南シナ海の軍事拠点化を進める中国を批判しつつも、領有権については特定の立場を取らずに当事者間の話し合いでの解決を主張してきた。
それを転換し、中国の主権を明確に切り捨てたのは「大きな外交的一手」(米専門家)と見なされている。
11月の米大統領選で苦戦が伝えられるトランプ氏が、保守層を意識して次々と打ち出す対中牽制の一環で、政権の新型コロナ対応への批判をそらす思惑もありそうだ。
中国外務省の趙立堅副報道局長は14日の記者会見で「中国の南シナ海での領土主権と海洋権益は十分な歴史と法理に基づいている」との主張。
「米国こそが地域の平和と安定の破壊者で、面倒を起こしているのは十分明らかだ」と批判した。