’20/12/29付北海道新聞朝刊5面社説
学術会議改編 任命拒否問題が本筋だ
政府は年内に一定の方向性を示すとしていた日本学術会議の在り方について、結論を来春以降に先送りした。
政権支持率が急落する中、会議の改編を強引に進めてさらに批判が高まるのを避けたのだろう。
しかし政府がなお会議側に、政府の特別機関からの独立を促していることは看過できない。
先週の両者の協議では、現行形態にこだわらず独立した法人にすることを含めて検討し、来年4月までに改革案を示すよう求めた。
すでに会議側は、現行形態が国を代表する学術団体の要件を全て満たしていると結論づけている。
独立性の高い政府機関ゆえに提言や報告に重みが増し、政府に歯止めをかける役割を果たせよう。
問題の本筋は別にある。
学術会議が推薦した候補のうち6人の任命を、菅義偉首相が一方的に拒否したことこそ問われるべきだ。
会議側は再三説明を求めているが回答は無い。
改革要求は問題のすり替えだ。
任命拒否を撤回させ、真相解明を急がねばならない。
政府・自民党は学術会議の会員構成にも矛先を向けている。
現在は人文・社会科学、生命科学、医学・工学の3部各70人だ。
自民党は、国内の科学者は理系が多く、構成が偏っていると問題視し、政府は先週、会議側に構成比率の再考を求めた。
任命拒否された6人は人文・社会科学の研究者で、安倍前政権の下で成立した安全保障関連法や「共謀罪」法などに反対してきた。
改革を求める政権の動きは、国の重要政策や任命拒否を批判する人文・社会科学の研究者たちを牽制する意図が色濃い。
1983年に旧総理府が作成した国会想定問答では「首相は日本学術会議の職務に対し指揮監督権を持っていない」としていた。
だが政府は任命拒否後、首相に学術会議の監督権があるとする内部文書を安倍政権下の2018年に作成していたと明らかにした。
憲法が禁じた集団的自衛権の行使容認や、前例のない検察官の定年延長などと同様、過去の政府見解や、国会論議を通じて積み重ねた法解釈を、恣意的に変更するものだ。
断じて認められない。
杉田和博官房副長官が今回の任命拒否だけでなく、安倍政権下の2018年の会員人事にも関与していたことが明らかになった。
それを示す公文書もある。
杉田氏を国会に招致し、首相とのやりとりを含め、すべてつまびらかにさせなければならない。
201229 学術会議改編 任命拒否問題が本筋だ