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210123 くすぶる「中国責任論」  武漢封鎖きょう1年

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’21/01/23付北海道新聞朝刊6面の記事

くすぶる「中国責任論」
 武漢封鎖きょう1年


【北京十亀敬介】新型コロナウイルスが蔓延した中国湖北省武漢市で、世界最初の都市封鎖が始まって23日で1年。
習近平指導部は武漢の経験を成功例と位置付け、早期の景気回復をアピールする一方、感染者数は政府発表より多かったとの研究結果が相次いで発表されている。
今冬も各地で患者が増えつつある中、政府批判を抑え込む姿勢が露骨に現れており、世界的な感染拡大に対する「中国責任論」は国際社会でくすぶり続けそうだ。




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指導部は自賛 批判封殺

「景気は1年前より落ち込んでいるが、外出先でマスクをつけ、スマホの(感染リスクを判定する)健康コードを使う以外、暮らしはコロナ前にほぼ戻った」。
武漢で企業誘致に携わる30代会社員はこう話す。

 武漢では2019年末には市中感染が 拡大。
昨年1月23日に市外との交通を遮断され、4月8日まで続いた。




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感染数に疑問符

 中国政府はこれら強権的な防疫対策を自賛。
医療関係者やボランティアの活躍を描く映画を上映するほか、中国メディアは米国など民主主義国家の苦境を報じ、共産党体制の優位を強調している。
主要国で唯一、20年の経済成長率がプラスだったことも宣伝材料だ。

 だが、武漢の感染者は約5万人、死者は3900人弱とする中国の公式発表には疑問がつきまとう。
中国疾病予防コントロールセンターは昨年12月、武漢市民のコロナへの抗体保有率が4.43%だったと発表。
単純計算で50万人近い感染者を示唆する結果だ。
武漢大など研究チームも、感染者数が昨年5月までに約16万8千人に上ったとの推計をまとめている。




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 昨年の春節(旧正月)に合わせ、封鎖前に500万人が武漢を離れており、国内外にコロナを広めた要因となった可能性が濃厚だ。
道内第一号の感染判明も武漢からの旅行者だった。
世界保健機関(WHO)や国際社会の新型コロナへの対応を検証する独立パネル(委員会)は18日、中国とWHOの初動の遅れを指摘する報告書を公表した。

 今冬もコロナ患者がじわりと増えており、河北省石家荘市などが再び封鎖され、影響は約4千万人に及ぶ。
衛生当局は旅行や帰省の自粛を呼びかけている。




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ネット監視強化

 再流行への不安が広がる中、中国政府はネット上の書き込みに対する監視を強化。
武漢封鎖直後、現地の混乱ぶりをネットなどで告発した市民や記者を次々に拘束し、昨年12月には市民記者、張展氏に懲役4年の実刑判決が言い渡された。
国民を萎縮させる「見せしめ」効果を狙っていることがうかがえる。

 中国政府はWHOの調査団の受け入れにも消極的だった。
1月中旬、調査団はようやく武漢入りが認められ、集団感染が確認された海鮮市場などを調べる。
「対応に自信があるなら全て見せるべきだ」(外交筋)との指摘が上がるが、中国が協力態勢をとらず、検証が滞る恐れがある。



210621-210123-6面くすぶる中国責任論